日興美術とコラボしたSDGsワークショップ
〜製品企画立案のグループワークにClassPad.netを活用〜
常葉大学附属橘中学校・高等学校
〈静岡県〉
望月 康平 先生
指導教科:数学 指導学年:高校1年生・3年生
【本SDGsワークショップの概要】
SDGsワークショップは、SDGsに繋がる活動を通して、世界・国・県・社会全体が取り組んでいるSDGsの理解を深め、社会の一員としての自覚を持つことを目的とした産学協同のワークショップ。
本カリキュラムは、SDGsに取り組んでいる地元静岡県の企業である日興美術から、「チョーク」「人工芝」「カレンダー」など、世の中から無くすことができないものから、廃棄物削減に繋がるような新しい製品を企画立案する、という課題を受け、生徒がグループ単位で案をまとめ発表する総合探究の授業です。SDGsに関する知識を得ると共に、自分の考えを持ち、理由を付けてその考えを自分の言葉で他者に伝え発表する力を養うことを目指しています。
1年生のSDGsワークショップと2年生のTPRプロジェクトとは
本校では、「学力以外の力も育てていきたい」という思いの基、1年生は主に探究学習の一環として、SDGsワークショップを取り入れています。静岡市のSDGs共同宣言校として複数の企業とタイアップをしており、多くの方々と様々な形でお話をしたり、考えを共有させていただいています。生徒たちは、多くの企業の方々とお会いすることによって、自分自身を知ること、または未来に向けて思考することを通じて、非常に成長していると実感しています。
2年生は、TPRプロジェクト(Tachibana Pioneers for the Region Project)と申しまして、いわゆる地域貢献を主に考えて活動をしています。21の企業や様々な団体と取り組みを行っており、毎週火曜日の5時間目と6時間目を使い、生徒たちを派遣または参加させていただいています。探究学習あるいは総合学習は様々な学校で取り組みを行っていると思いますが、これだけ多くの人数を一斉に外に出して体験をさせているのは、高校の中では珍しいと思います。この活動によって、もっと静岡市に貢献できる生徒を育てていきたいと考えます。また、生徒が自分の未来を考えるにあたって、静岡市の中で自分自身がどのような立ち位置にいるか、将来ここに戻ってきた時に、どのような考えを持ちながら生活をしていくか、そういった視点も高校生のうちから育てていくことも本校の特色の一つであると私は考えています。
SDGsワークショップとTPRプロジェクトの狙い
私が今危惧しているのは、生徒たちが生活の中でバーチャルな部分に大きく依存しているということです。私としては、できるだけ生の体験、実際に人と会って話をする、考える、またそれを基に振り返るといった活動が、今後の社会においては重要になってくるだろうと考えています。AIがどれだけ我々の生活の中に入ってくるかは分かりませんが、人の仕事、または社会で生きていくということは、最終的には人と人との関わりがなければ成り立ちません。生徒たちをできるだけ外へ出し、多くの方々に様々なご教示をいただきながら、生徒たちを育てていきたいと考えています。
取り組みによって培った能力を
生徒たちに将来どのように発揮していってほしいか
本校では、3年前にグランドデザインを作成し、その中で大きな二つの目標を掲げました。一つは、建学の精神に基づいて、自ら学び、または自らの幸せを感じられる生徒になること。もう一つは、社会の時代の変化に対応できる生徒となることです。
様々なものが大切だとは思いますが、やはりこれからは変化に耐えうるしなやかさや強さが大事になってくると思います。この面で、本校の特色ある教育が非常に重要だと私は感じています。
SDGsワークショップとTPRプロジェクトを立ち上げた時期
高校1年生のSDGsワークショップは3年前、ちょうど静岡市がSDGsのアジアハブ都市宣言を行った時に、本校としても何かタイアップができないかということで様々な団体や企業にお声掛けをし実現しました。
TPRプロジェクトは5年前、「地域協働推進校(アソシエイト)」として文部科学省からの認定を受けまして、その後さらなる発展を目指し、5Cスキル(Choice/Communication/Challenge/Coproduction/Contribution)を身に付けるための取り組みを本校独自で考案し、現在に至っています。
タイアップした団体や企業からの評価や地域貢献の効果
スターバックス、FDA、静岡銀行など、様々な企業と取り組みをさせていただいています。生徒たちも、学校の教師とは違う、家族とも違う、社会の中で活動されている方々と実際に会うことが非常に参考になった、ためになったという振り返りをしています。生徒たちの成長実感としては、非常に満足度の高いものになっていると感じます。
取り組みによって起こった生徒の変化
やはり学校では、机に座ってしっかりと勉強するというのが基本です。しかし、これからの社会を生きていく上では、それだけでは到底やっていけないと思います。こういった取り組みを行うことによって、生徒たちが自ら振り返り、様々なことを感じることができるようになったというのは非常に効果があったのではないかと思っています。今後は、それらを発展させ、自分の中で昇華させて、大学生になった時、または社会人になった時に、この経験が活きるように生徒たちにしっかりと根付かせていきたいと考えています。
取り組みに対する保護者の評価
生徒たちが様々な形で振り返りをしてくれるものですから、取り組んできた内容や体験してきたことを家庭で話してくれていることでしょう。保護者の方々も、こういった取り組みについて後押しをしてくれていることと思います。保護者の方々も、これからの社会はやはり非常に不確かな社会だと認識されていますので、学力プラスアルファの部分に関しては賛成していただけていると思います。
今後の展望
こういった取り組みが一過性で終わらないように、どのような形で根付かせていくのかが課題となります。将来的に彼らが成長していって、次の進路に向かった時に、フィードバックをしっかり行って、自分の成長にどのように本校での体験が役立っているのかという声を聞けるシステムを作りたい。これは、我々としても自信になりますし、在校生や指導する教員にとっても非常に価値のあるものになると思います。
授業の流れとClassPad.netの活用方法
ClassPad.netで事前に教師がクラスを5人一組にグループ分けをしておき、グループに一つふせんを配布する。
グループ内で一人一つのふせんで作業できるよう配布されたふせんを複製し、そこに各生徒が自分の製品企画案を書き込んでいく。
グループ内の他の4人のふせんに書かれた案に対して「面白そう」「便利そう」といった観点で、最も良いと思うものに◎を、2番目に良いと思うものに◯を付ける。
他の4人からの◎や◯が多かった2案について、「その製品があることで世の中がどのように変わるか」について、各生徒がさらに製品企画の精度を高め、ふせんを更新する。
他の4人の各ふせんにまとめられた2案について、良いと思った方に◎を付ける。(ふせんに書かれた案が一つだった場合は、意見や助言を加筆する。)
グループ内の4人からの◎が多かった案について、各グループの中で発表する。
探究的な学びの授業におけるICTツールやアプリの利点
一番の利点は、生徒たちが普段からなじみのあるものを使って授業に臨めることだと思います。
今の生徒たちは、スマートフォンやiPadを日常で当たり前のように使っています。それらを使うことで、紙とペンに比べスムーズに学びに入ることができている印象を受けます。私たち教師でも思い付かなかったような方法で、ICTツールを使ってグループワークをしたり、生徒たち同士で教え合ったりしていることには驚かされます。ICTツールによって、生徒同士での学び合いが深まったという実感があります。
教師と生徒の間にはどうしても壁があり、目線の高さに差がありますが、生徒同士は目線が一緒ですので、分からないところが気軽に聞けたりと、様々なことがうまく解決できているという実感があります。ICTによって、生徒たちの活動の幅が非常に広がったように思います。
探究の授業においてClassPad.netが便利だと思うポイント
準備物が圧倒的に減ったことと、生徒の意見をクラス全体にすぐに共有できるようになったことです。
今までグループワークをさせる際は、大きい模造紙や紙のふせんを用意したり、色を着けたい時にはマーカーを用意したりと、非常に数多くのものを用意する必要がありました。ClassPad.netを使えば、タブレット一つでグループワークを行えますので、教師としては非常に助かっています。
また、出した意見をすぐに共有できることが、生徒たちにとっては有効な機能だと思います。グループで良い意見が出たら、今までは模造紙にそれを書いて持ち上げて他者に見せていました。今はClassPad.netを介して提出することで、プロジェクターとスクリーンを使って教師がすぐにそれを映し出しクラスに共有することができます。「このアイデアは良い」と生徒たちから声が上がれば、アイデアを出した生徒は嬉しいですし、意見が出なくてモヤモヤしているようなグループのヒントやきっかけにもなっていきます。
用意するものが少なくなったこと、生徒から出た意見をすぐ教師から他の生徒にフィードバックできること。この二つが、ClassPad.netの便利なポイントです。
お気に入りの機能・使い方
生徒同士でふせんを共有し合える機能です。
グループワークや探究で生徒たちにふせんを作成してもらった後に、生徒同士でそのふせんを見ることができる点がClassPad.netの良いところです。ふせんを交換し合って、必ずそのふせんに何かしらのコメントやアクションを起こすことを促しています。スタンプ一つでもコメント一つでも残せれば、意見を出さないという生徒が絶対にいなくなりますし、コメントをもらえれば、もらった生徒は「嬉しい」という感情が芽生えますので、生徒の授業への参加意欲にも良い影響があると思っています。
導入前と導入後の【授業での変化】
授業準備の手間が大きく省けています。
今まで課題を生徒に出す際は、パソコン等で作成し印刷して生徒たちに配布し、生徒の考えを見たい時にはそれを回収して、と様々な工程がありました。今ではパソコンで作って、ClassPad.netに上げて、生徒からの意見を見たい時は、画面上で見ることができます。
導入前と導入後の【生徒の変化】
意見を出そう、答えを導こうという姿勢を強く持ってくれるようになりました。
積極的に参加をすることが難しい、発言するのが苦手だという生徒がクラスの中には一定数存在します。今までの紙のふせんを使ってのグループワークや紙のノートでの授業では、そういった生徒たちは授業の流れから外され気味でした。
しかし、そんな生徒でもClassPad.netを使って考えていることを文章にしてまとめて発表したり、クラス内で共有したりすることができるようになっています。また、課題に対する生徒個人の取り組み状況が教師側から一目瞭然なので、生徒たちも必ず何かしらの意見を出してくれたり、何かしらの答えを導こうという姿勢をだいぶ強く持ってくれるようになりました。そういったところに、教師として喜びを感じています。
SDGsワークショップに対する企業からの評判や地域貢献の効果
SDGsの探究は、静岡市役所、そして様々な企業のご協力をいただき行っています。「学校の教育活動との連携を重視したい、その中で新しいものやより良いものを生み出していきたい」と考えてくださる企業も多く、本校としてもそのような繋がりを大事にし深い学びを実現したいという思いを強く持っています。両者の思いがうまく重なり、良い効果が得られていると思っています。
探究的な学びの実践が生徒に与えた影響や効果
SDGsの探究では、主に生徒たちにはグループワークを通じて活動してもらっています。その中では、教師が思い付かないような考えや意見が出てくることがあり、驚くことが非常に多いです。様々な物事について考えたり、それを深く学んでいく主体性が生徒たちに見受けられるようになっています。
SDGsワークショップの今後の展望や取り組みたい授業
「SDGs QUESTみらい甲子園」に出場するというワークショップがあり、東海大会にエントリーし、最終的には全国大会を目標に本校の授業を進めています。企業との様々な連携を通して、生徒にはSDGsをきっかけに物事を探究し深く学んでいく力を伸ばして欲しいと思っています。結果として、このワークショップで東海大会で受賞したり全国大会に出るグループが一つでも増えれば、と期待しています。
また生徒たちが社会に出た時に、高校で様々なことを学び考えてきたことの蓄積を活かしてくれれば、教師としても嬉しいです。
生徒に聞いた、ClassPad.netの「良いところ」
SDGsの探究の授業では、ClassPad.netのふせん機能で、自分の意見を書いてクラスメイトと共有しています。自分の意見に対して、クラスメイトからコメントをもらうことや今まで自分になかった意見を見つけることができてすごく楽しいですし、やる気も出ます。
また、授業の中で分からないことがあったら、オンライン辞書機能で調べて、それを登録しておくこともできるので、後から見返すことができるところも探究の授業に便利だと思います。