とこは幼稚園・たちばな幼稚園とコラボしたTPRプロジェクト
〜教育プログラムの企画と実践の振り返りにClassPad.netを活用〜
常葉大学附属橘中学校・高等学校
〈静岡県〉
武田 皓希 先生
指導教科:国語 指導学年:高校2年生
【本TPRプロジェクトの概要】
TPRプロジェクト(Tachibana Pioneers for the Region Project)は、「橘で地域の先駆者となれる力を付ける!」をスローガンに、グループワークや発表など主体的に取り組む活動を実践する常葉大学附属橘高等学校独自の地域協働推進プロジェクト。
本カリキュラムは、常葉大学附属の幼稚園である、とこは幼稚園・たちばな幼稚園に登園している幼児(3歳~5歳)を対象に、遊びを交えた教育プログラムをグループごとに企画し実践する総合探究の授業です。実際に幼児と接しながら、教材作りも含め実施可能なプログラムを考え、施設の担当者とも相談しながら進めています。
1年生のSDGsワークショップと2年生のTPRプロジェクトとは
本校では、「学力以外の力も育てていきたい」という思いの基、1年生は主に探究学習の一環として、SDGsワークショップを取り入れています。静岡市のSDGs共同宣言校として複数の企業とタイアップをしており、多くの方々と様々な形でお話をしたり、考えを共有させていただいています。生徒たちは、多くの企業の方々とお会いすることによって、自分自身を知ること、または未来に向けて思考することを通じて、非常に成長していると実感しています。
2年生は、TPRプロジェクト(Tachibana Pioneers for the Region Project)と申しまして、いわゆる地域貢献を主に考えて活動をしています。21の企業や様々な団体と取り組みを行っており、毎週火曜日の5時間目と6時間目を使い、生徒たちを派遣または参加させていただいています。探究学習あるいは総合学習は様々な学校で取り組みを行っていると思いますが、これだけ多くの人数を一斉に外に出して体験をさせているのは、高校の中では珍しいと思います。この活動によって、もっと静岡市に貢献できる生徒を育てていきたいと考えます。また、生徒が自分の未来を考えるにあたって、静岡市の中で自分自身がどのような立ち位置にいるか、将来ここに戻ってきた時に、どのような考えを持ちながら生活をしていくか、そういった視点も高校生のうちから育てていくことも本校の特色の一つであると私は考えています。
SDGsワークショップとTPRプロジェクトの狙い
私が今危惧しているのは、生徒たちが生活の中でバーチャルな部分に大きく依存しているということです。私としては、できるだけ生の体験、実際に人と会って話をする、考える、またそれを基に振り返るといった活動が、今後の社会においては重要になってくるだろうと考えています。AIがどれだけ我々の生活の中に入ってくるかは分かりませんが、人の仕事、または社会で生きていくということは、最終的には人と人との関わりがなければ成り立ちません。生徒たちをできるだけ外へ出し、多くの方々に様々なご教示をいただきながら、生徒たちを育てていきたいと考えています。
取り組みによって培った能力を
生徒たちに将来どのように発揮していってほしいか
本校では、3年前にグランドデザインを作成し、その中で大きな二つの目標を掲げました。一つは、建学の精神に基づいて、自ら学び、または自らの幸せを感じられる生徒になること。もう一つは、社会の時代の変化に対応できる生徒となることです。
様々なものが大切だとは思いますが、やはりこれからは変化に耐えうるしなやかさや強さが大事になってくると思います。この面で、本校の特色ある教育が非常に重要だと私は感じています。
SDGsワークショップとTPRプロジェクトを立ち上げた時期
高校1年生のSDGsワークショップは3年前、ちょうど静岡市がSDGsのアジアハブ都市宣言を行った時に、本校としても何かタイアップができないかということで様々な団体や企業にお声掛けをし実現しました。
TPRプロジェクトは5年前、「地域協働推進校(アソシエイト)」として文部科学省からの認定を受けまして、その後さらなる発展を目指し、5Cスキル(Choice/Communication/Challenge/Coproduction/Contribution)を身に付けるための取り組みを本校独自で考案し、現在に至っています。
タイアップした団体や企業からの評価や地域貢献の効果
スターバックス、FDA、静岡銀行など、様々な企業と取り組みをさせていただいています。生徒たちも、学校の教師とは違う、家族とも違う、社会の中で活動されている方々と実際に会うことが非常に参考になった、ためになったという振り返りをしています。生徒たちの成長実感としては、非常に満足度の高いものになっていると感じます。
取り組みによって起こった生徒の変化
やはり学校では、机に座ってしっかりと勉強するというのが基本です。しかし、これからの社会を生きていく上では、それだけでは到底やっていけないと思います。こういった取り組みを行うことによって、生徒たちが自ら振り返り、様々なことを感じることができるようになったというのは非常に効果があったのではないかと思っています。今後は、それらを発展させ、自分の中で昇華させて、大学生になった時、または社会人になった時に、この経験が活きるように生徒たちにしっかりと根付かせていきたいと考えています。
取り組みに対する保護者の評価
生徒たちが様々な形で振り返りをしてくれるものですから、取り組んできた内容や体験してきたことを家庭で話してくれていることでしょう。保護者の方々も、こういった取り組みについて後押しをしてくれていることと思います。保護者の方々も、これからの社会はやはり非常に不確かな社会だと認識されていますので、学力プラスアルファの部分に関しては賛成していただけていると思います。
今後の展望
こういった取り組みが一過性で終わらないように、どのような形で根付かせていくのかが課題となります。将来的に彼らが成長していって、次の進路に向かった時に、フィードバックをしっかり行って、自分の成長にどのように本校での体験が役立っているのかという声を聞けるシステムを作りたい。これは、我々としても自信になりますし、在校生や指導する教員にとっても非常に価値のあるものになると思います。
授業の流れとClassPad.netの活用方法
あらかじめ教師が用意したデジタルノートを用いて、グループワーク機能を使用する。
グループに分かれ、リーダーがデジタルノートに「良かった点」「改善したい点」について、それぞれふせんを作成する。
グループ内の他の生徒も「良かった点」「改善したい点」の二つのふせんを作成し、リーダーが作成したふせんの下に並べ、ふせんに自分の振り返りとして、意見や写真などを貼り付けていく。
良かった点は「さらに良くなるためにはどうすれば良いか」、改善点は「次はどうしたら良いか」という次の実践に向けた内容を話し合い、新しいふせんに書き、ふせんを矢印で繋げていく。
生徒がふせんに記入した内容を教師が画面でリアルタイムに確認しながら机間巡視する。
次回実践に向けた話し合いを行い、YouTubeのリンクなども貼ってデジタルノートにまとめていく。
探究的な学びの授業におけるICTツールやアプリの利点
従来ではノートとペンのみがツールですが、インターネットに接続していることによって音声、画像、動画も記録することができます。探究においては、生徒たちのプレゼンなどを、より分かりやすく進化させていくために、教師からフィードバックする時に非常に役に立っています。
探究の授業においてClassPad.netが便利だと思うポイント
音声や画像、動画を一つのツールの中で保存できることが非常に便利です。
探究学習においては、生徒たちが自ら企画したり、課題を見つけてそれに対して様々な情報を集め、解決を目指していくことが基本の流れです。情報を集めてきた時に、音声や画像、動画など、多岐にわたるものを一つのツールの中で保存できることがClassPad.netの強みだと思います。
その情報を複数のメンバーと共有することによって、新たなアイデアが生まれます。それを提出したり、他の人に見てもらったりする時も、ClassPad.netなら一つの画面にまとまっている状態にできるので、非常に分かりやすく相手に伝えることができると思います。
お気に入りの機能・使い方
まずはオンライン辞書機能です。私は国語を担当していますが、やはり辞書は学習において非常に大切であり、その辞書が常に傍らにあるのは大きな安心感があります。インターネット検索では、その言葉の一元的な意味で終わってしまうことがありますが、辞書は複数の意味や関連する言葉が出てきます。その辞書の安心感を常に感じられるというのが一つの大きなメリットです。
また、グループワーク機能の中で様々な動画や音声、画像を貼って保存ができたりそれを共有できたりすることも非常に気に入っています。
導入前と導入後の【授業での変化】
積み上げの効率と質が大きく向上しました。
従来ですと紙を配り、そこに生徒が企画や振り返りを書いたものを回収し、目を通しチェックして返し、それを生徒がファイルに綴じるという作業で積み上げをしていました。しかしこの方法は、途中で紛失してしまったり、ファイルにダメージが加わってしまったりで、なかなか積み上げがうまくいかない生徒がいました。ClassPad.netではアプリ内で全て完結するため、積み上げを確実にしていくことができます。ある一定期間が経った後に振り返りをすることで、より深い振り返りができるようになってきたことも非常に大きい変化だと思います。
導入前と導入後の【生徒の変化】
「書く」から「打つ」への変換で、多くの生徒が自分の考えを表現できるようになりました。
今の生徒たちはスマートフォンやタブレットで文字を打つことに非常に長けており、ペンで書かせるよりもデバイスで打たせた方が、非常に良いアイデアが生まれることがあります。ClassPad.netの導入により、ペンではなかなか自分の思いを伝えられない生徒も、打つことによって自分の考えを表現できるようになりました。
受験期になると、小論文や志願理由書を書く機会も増えますが、手で書くと途中で間違えたら消しゴムで消さなくてはいけません。文章を入れ替える必要があったら複数行にわたって消すことになります。ClassPad.netを用いることによって効率よく文章を作成することができます。
そしてそれをわざわざ先生に会いにいかなくても提出することができることは生徒にとっても非常にプラスになっていると思います。
TPRプロジェクトに対する企業からの評判や地域貢献の効果
学校は生徒を守るために閉じられた空間になってしまっているので、中に他者が入ることが難しい状況になっています。ある企業からは、今は学校に入りにくく、高校生や若い人たちがどのように考えているのかを知る機会がなくなってきているというお話をいただいたこともありました。しかし私達はTPRプロジェクトの地域協働活動で外に出ていくことによって、守られた環境の中で校外の人たちと繋がることが実現できています。
実際に様々な企業、団体と活動させていただく中で、「高校生の力というのは大きい」と評価していただくことも増えました。また、生徒自身も自分が地域のために何かをすることで達成感を得ているようです。生徒たちには、テストの点数や成績表の数値だけではない価値として、郷土愛や静岡で頑張っていきたいという気持ちをさらに深めてもらえるきっかけになって欲しいと思います。地域の人たちも、それを後押しするような応援をしてくれています。
探究的な学びの実践が生徒に与えた影響や効果
生徒たちにとって、自分が今学んでいる内容が将来的に何に繋がっていくのか、学校の中だけではイメージしづらいものですが、探究プロジェクトを通し、社会の中で実際に働いている親や教師以外の大人と関わることで、自分の将来が学校生活と地続きになっているという認識をより明確に感じられるようになっていると思います。
生徒が普段の生活の中で出会う物やサービスがどのように成り立っているのかを学ぶことによって、学びへのモチベーションが上がったり、進路選択について具体的に考えられるようになったりといった変化が現れたように思います。
TPRプロジェクトの今後の展望や取り組みたい授業
以前は企画書を作る時は紙にペンで書いていましたが、ClassPad.net導入によって、その企画書に動画や画像を埋め込んだりすることができ、より具体的にその場面を想像できるようになりました。生徒たちが遊びながら学ぶということを、企画の中で実践できるのではないかと思います。
またその経験が高校卒業後、大学でより深く学ぶための糧になると思います。さらに、社会人になった時、企画を通して失敗したり、悩んだりした高校での経験をプラスに転化して、より良い社会人となって地域に貢献できるような人に育ってもらうことを目指しています。
生徒に聞いた、ClassPad.netの「良いところ」
TPRプロジェクトは、企業に出向いて企業の課題などを自分たちならどう解決できるのかを考える活動です。今まで知らなかった地域の課題や職業の課題などを細かく深く知ることができるので、とても良い活動だと思っています。
ふせん機能は、自分の意見を他の人たちに共有できるところがとても便利です。自分の意見を発表するのが苦手な生徒でも、ふせんに書くことで意見をみんなに共有することができますので、TPRプロジェクトのような探究の授業にとても良いと思います。