生徒が主体的に学ぶ力を育てる
オールインワンICT学習アプリ「ClassPad.net」
岡山県立和気閑谷高等学校
山本裕稀教諭
数式やグラフを自分の言葉で言語化して理解するため、「デジタルノート機能」を活用
1人1台端末を授業で効果的に活用するためには、クラウド型学習サービスが不可欠だ。その中で、授業に必要な機能やコンテンツを一つにまとめて学習プロセスを効率化し、生徒主体の学びへとつなげる、カシオ計算機のオールインワンICT学習アプリ「ClassPad.net」の評価が高まっている。ここでは同社が開催した「高校ICT活用セミナー」に登壇した岡山県立和気閑谷高等学校・山本裕稀教諭の活用事例から、その魅力を紹介する。
タブレット一つで授業が完結できる機能を搭載
江戸時代前期に開かれた「旧閑谷学校」にルーツを持つ、長い伝統と歴史を誇る和気閑谷高等学校。同校では、2018年度から一人一人の学力の向上や学習の質改善を図るため、タブレット端末やAI教材等の活用を開始。クラウドを活用した授業によって、アクティブ・ラーニングの活性化や家庭学習の充実に取り組んでいる。
こうした中、生徒自らが主体的に学ぶ姿勢を育むために役立っているのが、今年度から導入した「ClassPad.net」だ。本製品は教育現場で豊富な実績を持つ電子辞書「EX―word」のノウハウを生かし高校6教科に対応した「オンライン辞書機能」を搭載しているのはもちろん、ふせんを貼る感覚で自分だけのノートが作れる「デジタルノート機能」や、生徒の回答一覧の表示や授業中における課題の送受信ができる「授業支援機能」などを併せ持っている。
すなわち、「生徒の机の上のデジタル化」という開発コンセプト通り、教科書やノート、辞書を併用することなく、タブレット端末一つで授業が完結できるのが最大の長所になっている。
「数学ぎらい」「英語ぎらい」の克服に活用
授業での具体的な成功例として山本教諭が挙げたのが、「数学ぎらい」「英語ぎらい」の克服だ。まず、数学科では基礎的な計算能力不足の解消に大切となる予習+授業+復習のサイクルを徹底させるため、端末上で提出物の管理が簡単にできる「授業支援機能」の「提出BOX」を活用。提出期限を設け、生徒全体の提出状況を視覚化することで、一人一人の自主性、やる気を引き出している。
また、単元と単元のつながりの理解という難しい課題に向けては、各単元や授業の区切りに「授業のまとめデザイン」を作成させている。その際には数式やグラフを言語化して「自分の思考」と「数学」をリンクさせる必要があるが、「デジタルノート機能」を活用すれば視覚的、直感的な単元のまとめが可能になるという。「数学が苦手な生徒でも、『矢印がクロスする』など直感的な言葉を用いて、一次不等式の式・演算・図の関連性を理解することができた」と山本教諭は口にする。
体系的な知識の獲得と学力の向上に貢献
外国語科では、英単語を覚えることを苦痛に感じている生徒が多いことから、この状況を改善するために「ClassPad.net」を活用している。
授業の最初に教員が「デジタルノート機能」で準備したふせんを投影し、接頭辞について紹介。その後、生徒は、あらかじめ提示されている5種類の接頭辞から一つを選び、自分が選択した接頭辞に関する単語を「オンライン辞書機能」で調べていく。調べる際は、「デジタルノート機能」を使用し調べた結果をふせんとして保存する。音声も保存できるため発音も一緒にノートにまとめることができる。自分が選んだ接頭辞の意味を推測できたら、自分のノートを「提出BOX」で他の生徒に共有。自分の手元の端末で他の生徒のノートを確認することができ、さらに教員も生徒のノートを管理することができる。
このように、多面的な活用ができるプラットフォーム機能が、体系的な知識の獲得とそれに伴う学力の向上に貢献している。また、山本教諭は「ClassPad.net」の機能について、生徒同士が制作したものを共有し、自分とは違う考えに触れる回数が増えたため、そこでインスピレーションを得た生徒が自分の制作物を修正しブラッシュアップする様子も見られるようになるなど、生徒が授業に主体的に参加する仕掛けとしても効果的だと感じているという。さらに、「ClassPad.net」を授業で活用する利点として、理解スピードが異なる生徒にも個別にアプローチが可能になるため、新学習指導要領が目指す個別最適化された学びにもコミットできることを挙げた。
デジタルノート上に調べた英単語をふせん形式で保存できる(生徒作成例)