オンライン辞書+デジタルノートで生徒主体の授業を
~語彙力を高め、自ら学ぶ姿勢を引き出す学習支援ツールの活用~
※本記事は、学習情報研究12月17日発刊号に掲載された記事です。
高等学校においても1人1台端末の導入が進む中、その利活用のカギを握るのがクラウド型の学習支援システムだ。こうした中、カシオ計算機が開発したオンライン辞書とデジタルノート、数学ツールを融合した総合学習アプリ「ClassPad.net」が注目されている。教育現場で豊富な実績を持つ電子辞書“EX-word”から厳選した高校6教科に対応した22の「電子辞書コンテンツ」を搭載。ふせんを貼る感覚で自分だけのノートが作れる「デジタルノート機能」や、図形やグラフが描ける「数学ツール」などの学習ツールも備えているのが特徴だ。そこで、いち早く活用を進めている浦和実業学園中学校・高等学校の田口 純平教諭(国語科)に、その魅力を聞いた。
他の学習支援システムにはない辞書機能に注目
浦和実業学園中学校・高等学校
田口純平教諭(国語科、AL・情報管理主任)
同校は今年度からICT教育を本格化していくにあたり、中学1年と高校1年の約700人に先行してLTE対応のタブレットを導入。まずは家庭学習を充実させることを目的に活用を始めた。その中で、田口教諭が次のステップとなる学習支援ツールとして選んだのが、学習支援総合学習アプリ「ClassPad.net」だ。
「さまざまな学習支援ツールがある中でも大きな違いは、辞書機能が付いていることです。もともと本校ではEX-wordを購入している生徒も多く、これが手元にあるタブレットで即時に使え、自分たちのノートに貼り付けて保存もできる。しかも双方向コミュニケーション授業にも対応しているのが魅力でした」
こうした辞書機能に着目する理由は、今の中高生の語彙力に課題を感じているからにほかならない。言葉の意味を知るだけでなく、類語や例文へと知識を広げられるのが辞書のよさ。それに加えて、ノートに保存して自宅でも振り返りできることが生徒の語彙力を向上する力になると考えたのだ。
そんなデジタルノートは、紙のノートと変わらない使用感で手書き入力ができるとともに、使いたい辞書を呼び出して検索し、得られた結果を「ふせん形式」で保存できるのが特徴。また、画像ファイルやWebページのリンクも同様の使い方ができるため、自分で調べたことをまとめたり、思考を整理したりするのに最適なツールになっている。
辞書で言葉を調べて、そのアプローチから答えを導き出す
古文の演習問題。生徒からの回答は一覧表示できる。
では、具体的にどんな活用をしているのか。田口教諭は古文の大学入試に向けた演習授業を例に説明する。「答えを導き出すには、なぜその答えにたどり着いたかというアプローチが大切になります。今までは教員が板書や口頭で説明していましたが、生徒がどうやって答えを出したかについて知るには一人ずつ生徒に聞くしかありませんでした。そのため、答えは合っているが、そこに至るまでの理解が伴っていない生徒が多かったのです」と課題を挙げる。
しかし「デジタルノート機能」なら、配信した課題に対し生徒が送り返した回答は一覧表示できるため、教員は進捗状況を即座に把握できるし、生徒も仲間の回答から他の意見を捉えることができるという。
その上で、正解を紐解く文法のテクニカルな部分はノートに書いて説明してあげると、生徒はその言葉の意味を辞書機能で調べ始める。分からないことは自ら調べ、それをまた自宅などで復習することによって確かな知識になるのだ。「大学入試の問題は言葉の意味と解答にたどりつくプロセスを理解しなければ対応できません。情報を共有するだけなら他にもツールはありますが、辞書で言葉を調べて、そのアプローチから答えを導き出すのはClassPad.netじゃないとできないと感じました」
来年度から製品版導入!
各教科でのさらなる活用に期待
田口教諭がこうしたICT活用で目指すのは生徒中心の授業で、それによって自ら学びに向かう力を育てることにある。だからこそ、他にはない辞書の内容から発展できるツールの強みを活かして、知識の定着だけでなく、新学習指導要領が目指す個々の探究的な学びへと広げていくことを次の目標として挙げる。
学校全体としても、今は教員によって辞書機能を使うだけなど活用の段階に差はあるが、2年目に向けては各教科でのデジタルノートを使ったまとめ方や、双方向コミュニケーション授業を充実させたいと話す。特に高精度な計算機能を搭載した「数学ツール機能」は、「関数電卓などで培ったノウハウが生かされており、グラフや図形の引きやすさ、見やすさは一日の長があります」と評価。授業スタイルや教材作成を変えるものになると期待した。