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  ICT教育・GIGAスクール構想関連コラム

【高校のICT教育は何から始めたらいい?】
現場の先生に聞いたICT教育の具体例をご紹介

【高校のICT教育は何から始めたらいい?】現場の先生に聞いたICT教育の具体例をご紹介

小中学校までのICT教育の目的とは、入口としてのITリテラシーの向上や、デジタル技術への興味、デジタル機器の操作への慣れ、プログラミング教育、インターネットやSNSとの上手な付き合い方などが中心でした。

一方で高校では、学力に重心が置かれるようになります。高校の勉強は格段に難しくなり、大学受験を目指す生徒も多いなか、学力向上が重要なテーマになるからです。義務教育とは、一段階レベルの違う使い方が求められます。高校教育の現場で日々奮闘する先生の中には、ICT教育をどのように進め、授業や校務に取り入れたら良いのか、模索していらっしゃる方も多いのではないでしょうか。
そこで本コラムでは、高校におけるICT教育の状況や活用方法の視点について解説するとともに、実際に、学校でICTをご活用されている高校の先生の具体的な使用例についてもご紹介します。

高校におけるICT教育の活用例

教育現場におけるICTの活用とは、「何かをデジタル化すること」と考えるとわかりやすくなります。いくつかの視点で見ていきましょう。

●板書のデジタル化

高校でもICTの導入によって授業の風景が様変わりしています。以前は先生が黒板に書いた内容を、生徒がノートに書き写していましたが、今は端末を用い、データでやりとりをしている学校も多いようです。電子黒板がクラスに配備され、事前に用意した資料を投影したり、生徒の端末にデータを送ったりすることによって、板書の時間が削減され、考える時間や話し合いの時間を増やせるようになってきました。

板書のデジタル化

●「授業中の挙手」のデジタル化

生徒が授業に参加する方法は、「挙手して解答/発言する」「先生にあてられて答える」という形でしたが、クラス全員が自主的に参加しているとは言えません。
ICT教育では、PCやタブレットなどの端末を通してクラス全員が繋がっていることが特徴でありメリットです。誰か1人が答えるのではなく、ツールを活用して、全員が同時に答えたり、意見を出したりすることが可能となります。

特に高校の授業では、大きくは学力向上を目的とすることになるため、「誰か1人が応えられた」という情報ではなく、「クラス全体の何割くらいが理解したか」を先生が把握できることは、授業の質の向上にも繋げられ、非常に有益です。

「授業中の挙手」のデジタル化

●授業における説明や資料のデジタル化

数学の図形問題や関数などは、グラフを動かすことで理解が深まります。理科系では、実際の現象や生物の映像を見せることで、「言葉での説明」だけでなく「動画による視覚的な理解」にもつながり、知識の定着にも大いに役立ちます。
インターネットは情報の宝庫です。学習に特化したサイトでなくても、たとえば地理でグーグルマップを利用したり、様々な国の様子、自然の風景などを映像で見せたりすることもできます。5教科に限らず、先生のアイデアによって美術、音楽、体育など幅広い応用が可能になりそうです。

●小テストのデジタル化

高校の授業では、定期的に小テストを行い生徒の理解度を測っている先生も多いと思います。小テストをペーパーで行う場合は、回答、回収、採点、返却、成績の管理など、煩雑になってしまいます。オンラインで行えば、それら一連の作業が自動化され、成績もデータ化されます。

小テストのデジタル化

1回の小テストの点に一喜一憂するのではなく、どの生徒がどの領域や工程で躓いてしまったのか、または苦手としているのかなどがわかり、その情報を生徒自身にも伝えることで、より、学力向上に寄与する小テストとなるでしょう。
また、生徒にとって、テストは苦手意識があるものですが、リアルタイムで正答率ランキングがわかるようなツールを活用すると、ゲーム感覚で楽しむことができ、モチベーションが上がる、という効果も期待できるようです。

●生徒の自主学習のデジタル化

ICT教育が進む前、生徒にとっては、授業と教科書/参考書、辞書が学習のベースでしたが、授業を聞いてわからなかったことや、もっと深く知りたいことをインターネットで調べたり、オンライン辞書ツールを使ったりすることで、より自主学習の可能性が広がります。

生徒の自主学習のデジタル化

●探究学習のデジタル化

探究学習が科目に加えられ、今、各校ではさまざまな取り組みを行っています。探究活動に欠かせないのがインターネットです。いろいろなことを調べたり、グループの場合は連絡を取り合ったりと、複合的に使用されています。また最近ではアウトプットを重視する学校が増えていますが、発表では生徒がICTを駆使し、映像や動画、表やグラフなどを取り入れ、社会人顔負けのデジタル資料を作ったりしています。

探究学習のデジタル化

●コミュニケーションのデジタル化

現場の先生は様々な校務に対応するなか、集まって話し合う時間を作ることが難しかったりします。そこで、先生間の連携や、先生と生徒、クラブ活動などの連絡にデジタル化を推進している学校が多く見受けられます。保護者への連絡をデジタル化している学校もあり、手間を省くだけでなく、確実に保護者に届ける手段としても有効です。
学校からのお知らせとしてプリントを配布することも多いと思いますが、すでにデジタル化している学校もあります。これにより、プリントの印刷、配布などの手間を省くことができ、先生の負担軽減に繋がります。

高校におけるICT教育 各先生の取り組み

実際に、学校でICTをご活用されている高校の先生に、具体的な使用例について伺ってみました。

●授業の改善と理解度を深めるために活用

数学は生徒によって理解度に差がでやすい教科ですが、数学科のC先生は、授業で有料の授業支援アプリを活用し、授業の最後には、必ず感想や、疑問点などを生徒から集めているそうです。
「そのデータを見ると、生徒がどこでつまずいているかわかるので、次の授業に役立てています。生徒が理解できているところは説明をはぶき、その分、苦手な箇所にじっくりと時間をかけます。授業の内容にメリハリがでるようになりましたね」と語るC先生。
また、図形やグラフなどは、実際に見ることで、生徒の理解度が深まるため、オンラインのグラフ計算機ツールを使ってグラフを作成させているそうです。

●学校という場を楽しむことや繋がりを深めるために活用

授業だけでなく、クラブ活動などにも利用しているのが、N先生です。社会科担当で、授業では、経済産業省と内閣官房が提供している地域経済分析システムの『RESAS(リーサス)』を使用したり、Google Earthで世界の各地域を見たりしているそうです。

昨年はコロナ禍で文化祭が中止になりました。そこで生徒と一緒にオンラインでの脱出ゲームを作成。森エリア、海エリアなどに展開し、森にある謎、海にある謎を解き明かすゲームを考えました。また、N先生はボートクラブの顧問をしており、部員のフォームを動画で撮って矯正に役立てたり、コロナ禍で部活が出来ないときには、みんなで筋トレしている動画を撮ってアップし、繋がりを保ったりしているそうです。

学校という場を楽しむことや繋がりを深めるために活用

「生徒を個別に支援するときにも使います。また紙に鉛筆で書くと、なかなか文章を書けなくても、パソコン上なら表現できる生徒もおり、そういう点ではプラスですね。就職をする生徒には、社会に出てから困らないように、タイピングの練習をさせたり、基本的なICTのスキルを身につけさせたりしています」と語るN先生。
YouTubeでBGMを流してみたりするなど、「ICTの導入は楽しい」という印象を生徒に持ってもらうことを心がけ、工夫をしているそうです。

●Googleのサービスを中心に授業やコミュニケーションに積極的にICTを活用

工業化学専門のK先生は、ICT機器を試行錯誤しながら駆使しています。
「外部リソースからICT活用の情報を得ながら、面白いアイデアや使い方が思い浮かんだら、授業ですぐに試すようにしています。授業で上手くはまらないことは多々ありますが、どのようにすればより面白く学べるか『Googleフォーム』を用いて生徒の意見を聴き、一緒に授業をつくるようにしています。他には、生徒の思考や活動の時間を増やすために、板書するような要点やノートはデータで事前に共有することもあります。板書する時間は以前に比べて随分減りましたが、ノートの取り方やまとめ方は生徒に一任しています。」と語るK先生。

また、質問や疑問を意味する「はてな(?)」と「マラソン」を組み合わせて造語された『ハテナソン』という方法を用いて、問いを立てる練習をしたり、デジタルホワイトボード『Jamboard』を使って、生徒のアイデアを共有したりしています。今後は『Googleサイト』を用いて、クラスや授業専用のWebサイトを生徒と一緒につくって、よりインタラクティブに、学びが自然になっていくような環境を構想している。
「GIGA端末の導入により、教科書やノートの画一的な手段から、ものすごく大きな手段と限りない選択肢を得たと感じます。VUCA時代の教育に大きな一助となることを実感しています。」(K先生)

高校におけるICT教育 全国の先生とのつながり

最近ではICT教育のスキルを磨くためのコミュニティも誕生しています。有名なのが、 Google を活用している教育者の地域コミュニティ「Google 教育者グループ(GEG)」です。各地で発足しており、学校の枠を越えてお互いに研鑽しています。
また、「先生限定」のオンラインコミュニティサービス「センセイノート」では、2.5万人以上の先生が登録しており、同じ校種や科目の先生同士が、気軽に情報交換したり、困っていることを相談したりできます。
ICT教育の推進に困ったり迷ったりすることがあれば、このようなコミュニティに参加するのもお勧めです。

高校におけるICT教育 全国の先生とのつながり

まとめ

本コラムでは、高校の現場において、ICT教育を実際に自ら推進されている先生にもお話をお伺いするなかで、アイデア次第で様々な活用方法があることがわかりました。そして、そのアイデアを実現するためには、オンラインサービスなどのツールをうまく利用することが重要であることも見えてきました。次回は、「ICT教育に役立つツール」について、ご紹介したいと思います。

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■著者・監修者
柿崎 明子
教育ライター。長期にわたり教育現場を取材。朝日新聞出版の週刊誌「AERA」、朝日新聞の教育サイト「EDUA」、東洋経済新報社の「週刊東洋経済」などに教育記事を多数執筆。

著者・監修者 柿崎明子

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