ICT教育、それでもあえて残すべき
アナログ手法とは?
今までのコラムでは、ICTがいかに学校の教育を変えていくか、について触れてきました。しかし、学校の現場では先生方が長い間、手仕事や手作業で授業を進めてきました。それをすべて変えることはできませんし、変えていいものでもありません。
逆に、急激な変化はICTに対するアレルギーを起こしてしまう可能生もあります。今回は少し立ち止まり、アナログ手法の良さを認識しながら、その上でいかに有効にデジタルを導入していくかを考えてみましょう。
ICT教育は、何を目指しているのか
ICTを使えば、便利なことがたくさんありますし、今まで不可能だったことが可能にもなります。しかしICTはあくまでも手段であって、目的ではありません。授業や学習でICTを使うことが目的になってしまい、それに振り回されているようでは本末転倒と言えるでしょう。
ICT教育の究極の目的は、教育のデジタル化を通して、「問題解決・探求のために、情報と情報技術を上手に活用する知識と技能を身につける」ことです。
さらに重要なのは、授業を効率化し、校務をデジタル化することによって先生方の負担を減らすことにあります。日本の先生方は労働の負荷が大きく、働き方改革の必要性が言われていますが、ICT教育を取り入れることで、今まで培ってきた授業スタイルが大きく崩れてしまったり、逆に負担が著しく増えてしまったりするようでは意味がありません。いかに無理なくICT教育を取り入れていくかを考えることが大切です。
ICT教育でデジタル化できることのまとめ
残すべきアナログ手法を考える前に、教育のデジタル化でどんな効果が期待できるのか、おさらいしてみましょう。
「板書」のデジタル化
板書の内容を事前に準備したり、板書を生徒の端末に一斉送信したりすることで、板書の時間を短縮できます。生徒によって書き写す時間がまちまちですが、このタイムラグをなくすこともできます。
「授業中の挙手」のデジタル化
挙手での発表の代わりに、パソコンやタブレット端末から生徒の意見や解答を収集する、という方法もあります。消極的な生徒は意見ひとつ述べるにも「こんなことを話して笑われないか」「間違っているのではないか」と躊躇してしまいますが、このような問題の解決になります。
「授業における説明や資料」のデジタル化
インターネットは情報の宝庫。テキストだけの説明ではわかりにくい内容も、写真や図版を使って視覚、あるいは動画では聴覚も動員することで、理解を深めることができます。
「小テスト」のデジタル化
授業前の10分間を利用して、英単語や数学の計算問題などの小テストを行う学校も多いでしょう。テスト作りは意外と面倒なものですが、端末に一斉配信することで手間が省けます。生徒の点数を記録しておけば、弱点の発見にもつながります。
「コミュニケーション」のデジタル化
最近ではグループ学習を取り入れる授業が多く見られますが、意見のやりとりや収集に役立ちます。また生徒と先生を結ぶツールとしても重要な役割を果たしています。授業だけでなく、クラブ活動や生徒会、保護者への連絡手段としても有効です。
ICT教育でも残すべきアナログ手法
デジタル化することで多くのメリットがあることは確かです。では、そのなかでも、全てをデジタル化するのではなく、あえてアナログな手法を残していくことの意義を、実例を交えて考えてみましょう。
実物を見る
ICT教育によって、インターネット上にある膨大な写真や映像コンテンツが見られるようになりました。今までは見ることができなかった物を見られるようになった功績は大きいですが、全てを映像で見ればそれでいい、ということではありません。
特に理科は「観察」が大切です。小学校の夏休みにはよく朝顔の観察の宿題が出されますが、茎や葉がどのように成長し花がどのように咲くのか、毎日少しずつ育っていく様子を自分の目で見ることで知識が深まります。中学校以降の学習においても、顕微鏡を使って葉脈の作りを実際に見てみる、というような行為は実体験としての大きな価値があります。
化学ならば、実験は視覚だけでなく臭覚も動員することでより深い理解に繋がりますし、「実験がうまくいかなかった」という失敗の経験も、なぜうまくいかなかったのか、次はどうしたらよいのか、を考えることに繋がる教育的にとても大切な行為です。
社会の分野では博物館に行ったり、官公庁や企業などを見学したりする学校も多いようです。現場に行くことでその場の空気感も一緒に味わえます。やはりリアルな世界でないと得られない学びは、まだまだたくさんありますので、映像コンテンツなどといかに併用していくか、の視点が大事になってくるでしょう。
板書
板書をデジタル化することで授業を効率的に行えることは確かですが、実は板書にも効用があります。デジタル化を進めているある先生が、板書だけは黒板とチョークにこだわっていました。「チョークが黒板を叩く、コツコツというリズムが緊張感を醸し、生徒が眠くなりにくい」という理由からでした。現場の先生は、授業というリアルな場に向き合っていらっしゃるからこそ、いろいろと考え、自分なりの方法を模索していらっしゃるのだと感じます。
書きながら説明することで、授業のリズムを作りやすい先生もいらっしゃるでしょう。
板書をすることで生徒全員が黒板に注目する時間を作れる、書く順番の工夫やチョークの色などで重要箇所を示すことにより、生徒の理解度が高まる、といったことも期待できます。
最初から最後まで全てデジタルで完結することだけが、ICT教育ではありません。例えば、黒板を写真に残しておき、授業後にデータで配布する、という方法も考えられます。
事前にPDFなどで資料を用意し生徒に配布した方が良いのか、あえて板書を選択した方が良いのかは授業の内容や目的によって、場面場面でうまく使い分けるのが有効的です。
手書きのテスト
CBT(Computer Based Testing)と呼ばれる、コンピューターを使った試験方式がだいぶ普及してきており、漢検や英検などでもCBT受検が取り入れられています。学校でも、小テストなどはデジタル配信で行う所が増えています。CBTが効率的である一方で、ペーパーテストにも優位性があります。
選択問題や穴埋めテスト、読み方問題などは、デジタル化することのメリットが大きいですが、漢字や英単語は、やはり自分の手で書かないと覚えられません。数学なども途中式が必要な問題は、手を動かすことで頭の整理にも繋がってきます。
また、最近は記述が重視され、授業の中で文章を書く機会も増えていますが、いきなりキーボードで文章を書き始めることで、何を伝えたいのかよくわからないものになってしまう、という場合もあります。記述問題の訓練には、まず紙にペンやふせんで自分の考えていることを書き出してみる、それを俯瞰して見ながら並べ替えたり、取捨選択したりしながら整理する、というアナログでの行為も大切になってきます。
ノートへの手書きのメモ
ICT教育では、板書代わりにデジタルに書いた内容を、生徒児童の端末に瞬時に配布することができます。便利な機能ではありますが、配布された内容を画面上で眺めるだけだと、受け身になってしまいます。
一方で、板書をノートに写すと、「先生が発した大切な言葉」や「自分なりに考えたポイント」などを書き込むことができます。生徒児童が自分なりの視点を損なわないためにも、自分なりの気づきやポイントをノートに残すことを促す工夫も必要になってきます。
グループでのリアルでの共同作業
GIGAスクール構想でよく言われる「生徒児童ごとに最適化された学び」は、生徒児童がパソコンやタブレット端末をずっと一人で操作する状況を推奨しているわけではありません。
探究型学習の広がりを受けて、グループ学習を取り入れる学校も増えてきています。
授業テーマの紹介や必要資料の説明はICTを活用して効率的に行うことには大きなメリットがありますが、生徒児童が「考える」際には、大きな紙に手書きで文字を書いたり、ふせんを自由な位置に貼ったりして、自分の考えを「見える化」することが大切です。
大きな紙を囲むことでグループの一体感が生まれ、議論が盛り上がる効果もあるでしょう。
デジタルとアナログのハイブリッド「ClassPad.net」なら
ICT教育の取り入れ方は自由自在
デジタル化をどう進めていったらいいのか、多くの先生が悩まれているこの課題に対し、このコラムでは、デジタル一色になるのではなく、「残すべきアナログの良さ」について考えてきました。そこから見えてきたのは、今までアナログで行っていた価値とデジタルの可能性をいかに融合させていくか、ではないでしょうか。
カシオの「ClassPad.net」はまさにその観点に立った、ICT教育のための「オールインワンのICT学習アプリ」です。
ClassPad.netのデジタルノート機能は、パソコンやタブレット内で自分なりのノートが作成できる機能。アナログ感覚で使えることが特徴で、その一役を担うのが多彩な「ふせん」機能です。頭の中で「大事なポイントをふせんに書き、ノートに貼り付ける」行為を想像してみて下さい。ClassPad.netなら、ほとんど感覚的に想像通りのことがデジタル上でできるのです。
「テキストふせん」は、キーボードでの入力のほかに、タッチペンで手書きでも書き込みできます。タッチペンは色や太さが数種類用意されており、自分だけのオリジナルノートを作ることができます。ふせんカラーは12色も揃っていて、「重要だと感じたポイント」「授業を受けていて疑問に思ったこと」など、内容に応じて使い分けることができます。背景が透明なふせんも作成可能で、アナログのノートに近い、手書きのメモやイラストなどを自由自在に書き込むことができます。
ふせんには「テキストふせん」のほかに、ClassPad.netに搭載されている数学ツール「ClassPad Math」のグラフ機能などを貼り付けできる「数学ふせん」、参照したページのリンクを貼り付けできる「リンクふせん」、辞書で調べたことを貼り付けできる「EX-wordふせん」、撮影した写真や動画を貼り付けできる「カメラふせん」などがあります。さらに、ふせん同士をつなぐ矢印をつけて関連性をより明確にすることもできます。
アナログのノートの特徴であった、「手書きやふせんでの自由自在なノート作り」に加えて、デジタルならではの様々な資料添付、さらに何度でも編集でき、より充実した、よりわかりやすいノートとして更新していけることで、自分だけのデジタルノートになっていきます。
先生が事前に用意したデジタルノートを生徒に配布することもできますので、「最低限必要な情報が記載された土台としてのノートに対し、生徒自らがそこに自分なりの視点で書き加えていく」といった活用方法も考えられます。ClassPad.netの活用によって、アナログの良さは残しながら、スムーズにICT教育を進めていけることでしょう。
■著者・監修者
柿崎 明子
教育ライター。長期にわたり教育現場を取材。朝日新聞出版の週刊誌「AERA」、朝日新聞の教育サイト「EDUA」、東洋経済新報社の「週刊東洋経済」などに教育記事を多数執筆。
全国の中学校・高等学校で導入されている
ICT教育をサポートする、カシオの「ClassPad.net」
「ClassPad.net」とは、カシオが電子辞書や関数電卓で
長年培ってきたノウハウをいかし、
開発されたICT学習アプリです。
【主な特徴】
2.自由度の高いデジタルノート機能
辞書の検索結果や例文、Webページ・YouTube・Google マップのリンクなどを自由に貼り付けられるデジタルノート。調べてまとめることで思考力が身につきます。
画面は全て開発段階のため、最終仕様と異なる可能性がございます。