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  ICT教育・GIGAスクール構想関連コラム

探究学習の授業実践事例
【現場の先生視点でご紹介】

探究学習の授業実践事例 【現場の先生視点でご紹介】
著者・監修者 芹澤 和彦

【著者・監修者】
芹澤 和彦
高校英語教員/教育クリエイター

近年、多くの教育現場で注目されている「探究学習」は、生徒たちが主体的に問いを持ち、問題を見つけ、課題を設定し、解決に向けて行動を起こすための学びのあり方です。
生徒に新たな視角を提供し、知識の獲得だけでなく、生徒の批判的思考や問題発見、そして価値創造の力を養う探究学習ですが、教育の現場で日々奮闘する先生の中には探究学習をどのように実践していくか、お困りの方もいらっしゃるのではないでしょうか。そこで本コラムでは、実際に高校の先生が実践している具体的な授業例をご紹介します。

探究学習とは

「探究学習」は、昨今様々な文脈で使われている言葉ですので、定義する意味を含め、その他の類似概念とともに整理してみましょう。

「探究学習」の定義

文部科学省の掲げる目標は、子どもたちの「生きる力」を育むことだと捉えることができます。その手段として、学校教育の中で「主体的・対話的で深い学び」を実現していこうということが学習指導要領の根幹にある考え方です。それを実現させるためには、いわゆる「アクティブ・ラーニング」と呼ばれるような教授法・学習法を実施していく必要があり、そのための学びのあり方が「探究的な学び」だと考えられます。本コラムでは一般的に言われる「探究学習」を、この「探究的な学び」と同義で捉えていきたいと思います。

探究学習について、より詳しく知りたい方はこちらのコラムもご覧ください。
探究学習とは?より良い探究を学校で実施するポイントを教師の視点で紹介

探究学習(探究的な学び)の実践事例

ここからは、いくつかの教科において、探究学習(探究的な学び)を実施されてきた先生方の授業例をご紹介します。

愛光中学・高等学校 松下 直樹  先生
「地理」の実践例
ご所属:愛光中学・高等学校
お名前:松下 直樹 先生

高校1年生「地理総合」国際理解と国際協力

架空の開発途上国の教授言語政策を創る

①問題点の把握

3~4人が1組のグループに分かれ、教師が用意した資料をグループ内で分担して読み、『貧困層の子どもの教育水準が低くなる理由』について、問題点を構造的に把握する。

②ロールプレイ・ディスカッション

生徒は、それぞれが架空の国の有識者になった設定で、『最良の教授言語政策』を導き出すためのディスカッションを重ねる。グループ内の他者の意見について、メリットやデメリットを整理する。

③ChatGPTとのディスカッション

生徒たち以外の有識者としてAI(ChatGPT)にも意見を求め、AIともディスカッションを行う。

④合意形成・意思決定

生徒たちは、AIからの質問や意見に真摯に返答したり、あるいは逆に意見を述べたりしながら、AIを含めグループ内で合意をはかりながら意見を磨き上げ、最終的な意思決定を目指す。

著者・監修者 芹澤 和彦

松下先生のこの活動には、探究的な学びの要素が散りばめられています。
①資料を読み込み問題点を把握する際に、生徒たちの中で多様な問いが浮かび上がること
②新たな教授言語政策を導き出すというゴールに対して、自らの主張と客観的な根拠と向き合う必要があること
③AI(ChatGPT)を駆使することで、さらに問いが拡散されていくこと
④対話の場面が豊富に準備されていること
正解ありきの取り組みではないこと、そして何かを創る必要がある(ここでは教授言語政策)ことによって、探究的な学びは促進されると考えられます。

次は、「数学」の実践例です。一見正解があるように思われがちな「数学」の授業ですが、その中でどのように探究的な学びを演出できるのでしょうか。

福岡工業大学附属城東高等学校 石丸 貴史  先生
「数学」の実践例
ご所属:福岡工業大学附属城東高等学校
お名前:石丸 貴史 先生

高校1年生「数学Ⅰ」 図形と計量

三角形の三辺の長さから面積等を求める設問を生徒自身で設定する

①題材となる三角形についての確認

授業の起点となる「三辺の長さのみわかっている三角形」を教師が図示しクラス全員で確認する。

②図示から最初の設問を設定

『三辺の長さから何を求めることができるか』という問いを投げかける。 ここで、「面積を求めることができる」と答える生徒が多いと想定される。そこからさらに「面積を求める手順」について問いを投げかける。

③最初の設問の手順と解答確認

一定の演習時間を設け、生徒が各自考えた方法で面積を求める。この授業では「正解を導き出すこと」だけが目的ではないため、生徒には手順と用いる公式など、求める手段を明確にするよう促し、同じ手順で求めようとしているクラスメイトを探し、協働で解答していく。

④次の設問設定と共有

三角形の面積とそれを求めるための課程から、他に図形のどのような要素を計量できるか、さらに設問を考える。(他の単元との繋がりも含めて複数の要素が考えられるため、生徒が互いの設問設定を確認することで、視野が広がっていく。)

⑤設定した設問の解答解説作成と共有

設定した設問の解答について生徒が解説を作成し、同じ設問設定をした生徒同士で解答を確認し合う。

異なる設問設定を行った場合には独自の問題集ができることになり、図形と計量について理解を深めることができる。

【最初の設問設定例】
(1)cosA
(2)sinA
(3)三角形の面積S

【次の設問設定例】
(4)外接円の半径R
(5)内接円の半径r
(6)tanA
(7)角の二等分線の長さ
(8)中線の長さ

著者・監修者 芹澤 和彦

石丸先生の授業プランは、「数学」においても探究的な学びをどう演出できるかという点で、非常に示唆に富む事例です。
① 既存の知識を活用し生徒自らが新たな問いを設定している
②クラスメイトと協力し合いながら自分たちの立てた問いに対する解を考える(これは主張と根拠の最適解を求める過程と同じ)
③ 図形という1つのテーマに対して、多様な見方を学ぶことができる
④ 自ら解説を作成し、それらを共有し問題集を創ることで、知識の再構築と深い理解を促進している

松下先生の地理総合の授業、石丸先生の数学の授業では、各科目が提供する確定的な解答を超えて、問題発見、課題設定、そして解決までのプロセスそのものに焦点を当て、生徒が主体的に思考し、探究する力を養う工夫があります。このように、生徒が自ら考え学ぶ機会を最大限に引き出すための工夫ができるのが、「探究的な学び」の醍醐味と言えるでしょう。

最後に筆者自身の実践例をご紹介します。特に、「振り返り」に焦点を当てた英語のライティング活動です。

著者・監修者 芹澤 和彦
「英語」の実践例
所属:大阪高等学校
名前:芹澤 和彦(本コラム執筆者)

自己調整学習を促すライティングの帯活動

①テーマの提示

生徒にテーマを伝える。ICTツールの予約配信機能を使い、生徒が書くタイミングを自己決定できるように直前の授業が終わったタイミングで生徒がテーマを確認できるようにする。

②3分間ライティング

チャイムとともに教師は3分間測り、生徒はライティングノートに書き始める。

③語数の記録とICTでの提出

生徒は語数を数え、ノートの続きに語数を残す。その後、生徒はICTを使用し、その日書いた文章を写真に撮って提出する。

④リフレクションと前回のリフレクションフィードバック

日本語で振り返りを書く。自身がどのように臨むことができたか、前回と比べてどうだったか、次回意識したいことは何か、などをリフレクションとして残す。書き終わった後は、前回書いた中で思考が深いリフレクションを紹介し、どこが深いのかを話し合う。

⑤自己調整学習タイム

5分ほど時間を確保し「書くことができなかった表現」や「気になる表現」を調べながらノートにまとめていく。(調べる以外にも、生成AIに書いた文章をのせて添削してもらったり、翻訳サービスを駆使して自分の文章との比較をしたりして気づきを得た生徒の取組を積極的に紹介する。)

著者・監修者 芹澤 和彦

合計で10分ほどの活動ですが、生徒は自分自身で「どうすればより表現の幅が広がるか?」「どうすればわかりやすい文章が書けるのか?」「英検2級を目標にしたライティングはどのようなものか?」といった学びの目標に向けて、また具体的に「seeとlookの違いは何か?」「日本語の“健気”はどう英語で表現するのか?」「関係代名詞はどのような時に使うのか?」といった言語表現について、探究をしていきます。

まとめ

授業の場面でどのように探究的な学びを生み出すことができるかについて、地理総合、数学、英語の教科の例をご紹介しました。探究学習が生徒の批判的思考、問題発見の力、創造性をいかに育むかのヒントになったのではないでしょうか。

学習指導要領に記載されている探究の概念がさらに現実世界に根ざした形で結びつき、学校現場へと浸透していくにはまだ時間が必要かもしれませんが、教育現場での試行錯誤を通じて、より良い探究学習の方法を模索していきましょう。教師と生徒が共に学び、気づきを共有し合うことで、探究学習の理解と実践はさらに深まります。今後も「探究」という学びの旅で、共に語らい合い、問い合っていきましょう。

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著者・監修者 芹澤 和彦

■著者・監修者
芹澤 和彦
高校英語教員/教育クリエイター

講演、企業研修、教員研修、イベント運営を多数実施。英語教育ではEF Excellent Award in Language Teaching 2019 Japan Finalist 第2位の表彰、アントレプレナーシップ教育ではNPO法人BizWorld Japan アドバイザー、ICT教育では2019~2022 Microsoft Innovative Educator Expertの認定を受けるなど、ジャンルを越えて教育実践を展開している。探究やクリエイティブ・ラーニング型授業の実践家である一方で、教員をしながら個人事業として起業。学校と社会の繋がりをつくる多様な活動をしている。
著書『中学校・高等学校 4技能5領域の英語言語活動アイデア』(明治図書)。

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