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  ICT教育・GIGAスクール構想関連コラム

高校教師座談会 第2回

現役の高校教師が徹底議論!
『探究学習の面白さと難しさ』

現役高校教師オンライン座談会 Vol.2
著者・監修者 芹澤 和彦

【モデレーター】
芹澤 和彦
高校英語教員/教育クリエイター

「生徒たちが自ら問いを持ち、きっかけを作り情報収集・課題設定して、自分の中で、そして自分だけではなく、他者との関わりの中で最適解を導いていく」探究学習。総合的な探究の時間や教科ごとの探究など、高校教育でカリキュラムとして設定されているなか、その実践にお悩みの先生も多いことと思います。
今回は高校学習において様々な実践をされている三名の先生にお集まりいただき、探究学習の面白さと難しさについて語っていただきました。

大阪高等学校  前田 先生

前田 先生

大阪高等学校(大阪府)
担当教科:世界史

大商学園高等学校  熊崎 先生

熊崎 先生

大商学園高等学校(大阪府)
担当教科:数学

大手前高松中学・高等学校  合田 先生

合田 先生

大手前高松中学・高等学校(香川県)
担当教科:理科(物理)・数学・情報

著者・監修者 芹澤 和彦

カリキュラムとして存在している一方で、まだまだ探究学習について手探りの学校も多いと思います。まずはあまり堅苦しくならず、探究学習についてどのような印象をお持ちかお伺いできますか?

大阪高等学校  前田 先生

昨年度からアクティブラーニングにチャレンジし始めて今年二年目ですが、改めて「そもそも探究ってなんだろう?」と思い始め、果たして私は探究的な授業ができているのか、という不安もありました。
私の勤務校の生徒が受ける探究基礎という授業がありますが、その一回目を担当した先生が「探究とは?」という問いに対して、「答えの用意されていない問いに対してより良い答えを導き出そうとする活動」とおっしゃっていました。それを聞いたときに、私の行っている授業はそれに当てはまっているな、と思いました。

例えば私が世界史の授業の中で設定した問い「理想の家族ってどんな家族?」に対する答えは一つではありません。45分間の中で生徒たちがより良い答えを一生懸命導き出そうとしているのを見ると「ちゃんと探究できているな」と感じます。
私の担当である社会科の教育目標は、大まかに言うと「より良い社会・より良い世界を実現させるために社会に対して自ら働きかけられる地球市民を育てる」ということです。「答えの用意されていない」問いに対してより良い答えを導き出すことで言えば、「より良い家族像」や「より良い人生像」について、生徒が自分なりの答えを導き出していく。そういうことを一人一人の個人ができれば、社会科が目標とする地球市民を育てられるだろう、と思っています。それは常日頃生徒に伝えていることですが、そのようなことを伝えれば伝えるほど、生徒もいい顔で授業に取り組んでくれるようになって、そういう部分がやりがいであり、楽しいな、面白いな、と思える部分です。

ただ、「理想の家族ってどんな家族?」という問いは、教師側が設定したものです。
生徒が自ら問いを発見することの難しさも感じています。

著者・監修者 芹澤 和彦

「答えの用意されていない」問い、というのがポイントになりそうですね。
一方で、前田先生のように「生徒が自ら問いを発見する」というハードルの高さに悩んでいる先生もいると思うのですが、探究のメイン担当として活動なさっている熊崎先生が単元デザインにあたって「これは大事」と思っていることはありますか?

大商学園高等学校  熊崎 先生

確かに生徒が自ら自分の問いを見つけるのはとても難しい。これは何年考えても解決しないテーマで、それができたら素晴らしい探究ができるのではと思います。それは認識しつつも、今は教師がある程度道筋を整えながら、どうやったら生徒が面白くなるか。生徒が面白くなる以前に、どうやったら教師が楽しくなるか、を考えながら探究学習の課題を設定しています。

私の勤務校では、総合的な探究の授業の中で動画作りを行っていますが、基本的な探究の大枠・テーマは探究の委員会の方で作り、そこから「中学生に伝えたい本校の魅力を動画にせよ」というミッションを設定しています。
授業を提示する上では「いかに余白を作るか」を一番大事にしています。提示された教師がどれだけオリジナリティを入れられるような余白を作るか。授業を行うのはクラス担当の教師ですので、クラスの生徒がどのようなアイデアを考え、どのように作り、ミッションに対する返答を行うかは全て教師のファシリテーションに委ねています。
そうすることで、「この生徒がこんなものを作ってきた!」「こんなデザインの手法があったのか!」と感心するようなものが出てきます。そういう意味では純粋に楽しいな、という気持ちです。

著者・監修者 芹澤 和彦

ありがとうございます。生徒自身が自分の問いを自分で作ってそれに対してアクションを起こしていくことには難しさがある一方、その具体の部分で生徒たちが作ってくるものの面白さがある。関わっている先生たちも前向きに楽しめることは、素晴らしい取り組みですね。

合田先生はこの「答えの用意されていない」問いの「面白さと難しさ」について、どのようにお考えですか?

大手前高松中学・高等学校  合田 先生

探究の面白さと難しさは、同じところにあると思っています。先ほどからお話にあがっている、答えが用意されてない、という部分が非常に面白いし非常に難しいのだろう、と思います。私の勤務校は全員が大学に行くような進学校ですが、そうなると偏差値や「◯◯大学に何人合格しました」という分かりやすい指標が存在します。偏差値が上がったかどうかということが正解で、価値判断の絶対軸だったりするわけです。今でもそうかもしれません。でも探究はそうじゃない。総合的な探究の時間の場合は、そのような絶対的な価値判断の軸がまずない。これが面白いところであり、難しいところです。

探究のことがあまりよく分からない先生からは、「これはどうなったら正解になるのですか」と聞かれることがよくあります。生徒から出てくるアウトプットは、本当に多種多様です。先ほど熊崎先生のお話で、「こんな手法があったのか!」というエピソードがありましたが、それが出てくるのが探究の非常に面白いところであり、それが許されるのも面白いところです。
しかし、多くの、特に進学校の先生からしてみれば、多種多様なものが出てくるというのは不安らしいです。それに対してどうフィードバックしていったらいいかやこれは良い、これはダメという判断も難しいと思っているようです。私も学校の探究のカリキュラムを作っていますが、私が作ったものを渡して、他の先生方にやってもらう中で一番苦労しているのは「何が出てくるか分からない」という先生方の不安をどう払拭できるかという部分です。

著者・監修者 芹澤 和彦

「先生方の不安」というお話がありました。確かに探究学習において、先生たちのスキルの問題やマインドの問題をおっしゃる方が多いと思いますが、前田先生はどのようなお考えで単元デザインを実践されていますか?

大阪高等学校  前田 先生

去年から歴史総合と世界史探究の単元デザインを行っており、私が作った単元デザインで、授業を構成して、全てのプリントやパワーポイント、テストを作っています。昨年度は、『問いの構造図』の方式で、基本は生徒主体でありつつ、講義形式で授業が進んでいく形を採用し、それに関して他の先生から異論は出ませんでした。今年はアクティブラーニングの実践法である『ジグソー法』を提案しています。一学期はホップ・ステップ・ジャンプのホップとして『問いの構造図』で「資料の読み取り」と「対話」と「答えを表現する」ことを行い、次にステップ・ジャンプとして『ジグソー法』をやってみたい、と伝えています。ただ、他の先生たちはグループワークを行うことに対して「遊んでしまうのではないか」と不安を持っているようですし、「グループワークはもういいよ」と言う生徒もいます。

他の先生を巻き込んでいくときに、先生方が不安に感じてしまうことがあり、ここに多少の難しさを感じています。「なぜそのような学び方をするのかを十分に伝えることで、生徒は納得感を持って授業に取り組んでいくようになります」ということはお伝えするようにしています。

著者・監修者 芹澤 和彦

先生たちのスキルやマインドがまちまちで、やはり様々な意見が出てしまうのですね。「なぜそのような学び方をするのか」という観点で、合田先生が大切にされていることや、実践されていることはありますか?

大手前高松中学・高等学校  合田 先生

私は、国語でも理科でも教科を問わず、探究的な学びはとても大事だと思います。「主体的・対話的で深い学び」の本質に関わってきますが、それがまさに探究そのものだと思っています。どんな授業であれ、探究的な学びを充実させていくことは大事なことだろうと思う一方で「そんなことをやって偏差値が上がるの?」と言われることもありますので、具体的な事例をお見せしたいと思います。

以前、このような課題を生徒に提示しました。
「あなたはコイルまたはコンデンサです、自己PR文を作りましょう」というものです。
まさに就活の時のエントリーシートですね。
「私はコイルソレノイドと申します、これまでこんな活動をしてきました」とコイルになりきって、私にはこんな強みがあります、と説明を考えます。

これをやるとおそらく偏差値も上がると思います。コイルの特徴がしっかり分かっていないと、適切なものは絶対に書けないからです。さらに、将来大人になってから仕事をする中で、こういう発想力やプレゼン力も大事になるので、探究的な学びを行うことは、教育として「おいしい」ことではないかと思っています。

教師の適切なサポートは必要だと思いますので、「コイルってどんなところに使われていたか」とか、「どんな特徴があったか」という疑問に対して、ここを見に行けば分かるという仕掛けは用意しました。

最終成果物で、生徒はこのようなものを書いてきました。

陰ながら身近をモットーに、布団がずれたら直す仕組みを確立させようと思う

コイルは変化を嫌うという性質から、布団がずれたら戻るような機能をコイルによって実現できないか、という面白いことを考えてくれました。できるかどうかというより、そういう発想力が広がっていくのが価値がありますし、これを教科の授業にうまく落とし込むというのが非常に面白い。ただ反面、こういうコンテンツを考えるのは正直難しいことでもあります。
どの単元でもできるということでもないですし、時間もかかります。コイルのことやコンデンサのことは、教えた方が手っ取り早いです。「こうだよ、こうだよ、はい終わり」とやる方が授業時間としては非常に短くて済む。探究的な授業の難しさのもう一つは、とても時間がかかることです。それが先生によっては、もどかしくて待てないということです。
先程の熊崎先生の余白という言葉にも繋がるかもしれませんが、いかにこの余白を楽しめるかということが、教科の探究や総合的な探究の時間をうまく駆動させるポイントの一つだと思っています。

私が探究を絶対やった方がいいと思う理由は、教科でも総合的な探究の時間でも、主体的学習のスペクトラムのレイヤーが上へ上へと絶対に上がっていくからです。面白い探究があればあるほど主体度、主体的学習者度は絶対に上がります。先ほど「理想の家族ってどんな家族?」という授業の話を前田先生がされていましたが、「そうか!この学びがこういうふうに繋がるのか!」となったら生徒の人生にも影響していくでしょう。主体度が上がる面白さが、探究の授業にはあると思います。

著者・監修者 芹澤 和彦

ありがとうございます。これからの「探究と学力の関係性」についての示唆に富む非常にユニークで興味深い事例もご紹介いただきました。

もちろん実践においては様々な課題も上げられますが、それでも三名の先生からは探究学習の楽しさの側面も語っていただきました。
そこで最後にズバリ、「探究学習の魅力とは?」をお答えいただきたいと思います。

大阪高等学校  前田 先生  疲れる。 けどオモロイ!

前田 先生

「疲れる」は生徒たちの言葉です。生徒主体の授業になると「疲れる」という感想が度々上がりますが、一コマしっかり頭をフル回転させている証だと思います。疲れるぐらい毎時間対話を繰り返すうちに、古代から大きく変わることのない社会の対立構造や近代の大きな変革の中で生まれた現代社会の根の部分に気付くことは生徒にとって「オモロイ」ことでもあるようです。

大商学園高等学校  熊崎 先生  外部との繋がりを 作りやすい。 ひとりじゃできない ことを実感できる。

熊崎 先生

探究学習は学校をひとつにすると思います。探究学習の要となる総合的な探究の時間のカリキュラムを考える上でグランドデザインが柱となるからです。

大手前高松中学・高等学校  合田 先生  「探究」って 「びっくり箱」 だから面白いよね

合田 先生

教科の授業は、多くが辿り着くべきゴールが明確です。入試で点が取れる学力が身に付いたかどうか。でも探究は何が正解か分かっていない。教師も生徒も、やってみて初めて、「うわ!こんな結果になっちゃった!(いい意味で)」となることがあるのが探究活動の一番の魅力だと思います。

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著者・監修者 芹澤 和彦

■著者・監修者
芹澤 和彦
高校英語教員/教育クリエイター

講演、企業研修、教員研修、イベント運営を多数実施。英語教育ではEF Excellent Award in Language Teaching 2019 Japan Finalist 第2位の表彰、アントレプレナーシップ教育ではNPO法人BizWorld Japan アドバイザー、ICT教育では2019~2022 Microsoft Innovative Educator Expertの認定を受けるなど、ジャンルを越えて教育実践を展開している。探究やクリエイティブ・ラーニング型授業の実践家である一方で、教員をしながら個人事業として起業。学校と社会の繋がりをつくる多様な活動をしている。
著書『中学校・高等学校 4技能5領域の英語言語活動アイデア』(明治図書)。

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