
ルーブリックとは?活用の意義や作成手順、
探究学習やグループワークでの活用例を解説


【著者・監修者】
芹澤 和彦
高校英語教員/教育クリエイター

現在、高校現場においても「アクティブ・ラーニング」や「主体的・対話的で深い学び」、「探究学習」といった学びのあり方が模索されています。その中でも難しいと声を聞くのは「評価方法」。こういった学びを測定する手法として、パフォーマンス課題に基づく評価がありますが、今回はその中で使用される「ルーブリック」と呼ばれる評価について解説します。
本コラムでは、ルーブリックの基本から作成手順、活用方法、さらに評価を公正かつ効率的に行うための工夫までを詳しく解説します。授業改善の一助となれば幸いです。
ルーブリックとは?その基本と教育現場での意義
ルーブリックの定義
教育現場でルーブリックが注目されている理由は、「アクティブ・ラーニング」や「主体的・対話的で深い学び」、「探究学習」といった評価の「見える化」を実現できるからです。ルーブリックとは、評価基準を整理し、段階ごとに達成度を示した評価表のことです。
具体的には、縦軸に「評価レベル(例:優れている、十分、改善が必要)」、横軸に「評価項目(例:情報収集、分析力、発表の明確さ)」を設定し、交差するセルに具体的な判断の基準を文章で記述します(こういった文章を規準[のりじゅん]と呼びます)。これにより、生徒が「何をどのように達成すれば良いか」が明確になり、学びの指針を提供できます。

ルーブリックの大きな特徴は、従来のテスト形式のような「〇×」ではなく、「どの程度達成しているか」を評価する点です。これにより、単に知識の量を測定するだけでなく、生徒の協働的な学びや探究プロセスの質を総合的に評価できるようになります。評価者の主観を少しでも減らし、透明性や公平性のある評価を行うための有効な手段と言われています。
高校教育現場での意義
ルーブリックは、生徒の「学びの可視化」を促進するツールとして、多くの教育現場で活用されています。言葉によって評価の基準を示すことで、生徒は自分の現状を客観的に理解しやすくなり、どの部分を改善すれば次の目標に到達できるかが分かるようになります。これにより、学習の方向性が明確になり、主体的な学びを促進するとも考えられています。

また、教師にとっては、ルーブリックは指導の焦点を定めやすくする効果があります。授業中や課題の提出後に、生徒へ具体的なフィードバックを行う際、「どの観点で何が優れていたのか」「どこを改善すべきか」を具体的に説明できるため、指導内容が明確化します。これにより、単なる点数の提示ではなく、生徒自身の成長を支えるフィードバックを実現しやすくなると考えられます。
特に探究学習やアクティブラーニングといった学びのあり方においては、知識だけで測れないものを評価する必要があります。例えば、グループでの協働作業では、発表内容だけでなく、役割分担の工夫やディスカッションの進め方といったプロセスも評価の対象に含むことができます。ルーブリックは、このような多面的な学びを評価する際に欠かせないツールです。
ルーブリックを活用することで、授業の目標と評価基準が一致し、教員と生徒の双方にとって「次に何をすべきか」が明確になります。次のセクションでは、具体的なルーブリックの作成手順を解説し、現場で実践するためのポイントを紹介します。
高校の授業でのルーブリック作成手順
前のセクションで紹介した通り、ルーブリックは評価基準を「見える化」し、生徒の成長を促進するツールです。しかし、効果的に活用するためには、授業の目標に合わせてルーブリックを作成する必要があります。ここでは、現場の教師が手軽に取り組める具体的な作成手順を紹介します。
①資質・能力を明確にする
まず、授業で育んでほしいことをはっきりさせましょう。仮に「自分の興味関心のあることに関して探究できること」だとすると、その中の要素を明確にしておく必要があります。この段階で目標を具体的に定めることで、評価の方向性が明確になります。

〈ルーブリック表例〉

➁評価項目を3~4つ設定する
次に、設定した資質・能力を測定するための評価項目を3~4つに絞ります。例えば、探究学習のプロジェクトなら、「情報収集」「論理性」「発表」といった項目が考えられます。評価項目が多すぎると評価が複雑になり、生徒の負担も増えるため、授業の目的に合わせて選定しましょう。

③評価基準を文章化する
各評価項目について、具体的な成長の姿を文章で記述します。例えば、「情報収集」を評価する場合は、「信頼性の高い資料を幅広く活用し、論理的に説明できている」といった表現が考えられます。文章化する際は、専門的な言葉を使いすぎず、生徒が理解しやすい表現を意識しましょう。

④判断基準を3~4段階で設定する
次に、達成度のレベルを3~4段階で設定します。「優れている(A)」「十分(B)」「改善が必要(C)」など、段階ごとに達成度の違いを示します。各レベルの基準を具体的に示すことで、生徒はどのレベルを目指せばよいかを把握しやすくなります。

⑤評価表を完成させ、配点を決定する
これまで設定した評価項目と判断基準を表形式にまとめ、各項目の配点を決めます。配点のバランスを考慮し、重点を置きたい項目には高い点数を配分するなど、授業の目標に沿った調整が大切です。

⑥評価結果を通知表や指導要録に反映できるよう換算式を準備する
最後に、評価結果を通知表や指導要録に反映するための換算式を作成します。例えば、各観点の合計得点を「A評価」「B評価」に変換する方法などがあります。このような換算式を事前に準備しておくことで、成績評価がスムーズになります。

〈現場での実践のヒント〉
シンプルなルーブリックから始める
評価基準を一人で作成するのではなく、複数の教師と相談しながら調整することで、信頼性の高いルーブリックを作成できます。同じ学年や教科の担当者と基準を共有し、評価のブレを防ぎ、共通理解を深めましょう。
他教員と相談しながら調整する
評価基準を一人で作成するのではなく、複数の教師と相談しながら調整することで、信頼性の高いルーブリックを作成できます。同じ学年や教科の担当者と基準を共有し、評価のブレを防ぎ、共通理解を深めましょう。
次のセクションでは、具体的な活用例として、探究学習やグループワークでの評価方法を詳しく解説します。ルーブリックを使った評価がどのように授業を変えるのか、事例を基に見ていきましょう。
探究学習やグループワークでの活用例
グループワークでのルーブリックの活用場面
グループで課題に取り組む際、協力体制や話し合いの進め方を評価するルーブリックを活用します。評価するのは成果物の完成度だけでなく、話し合いの過程や役割分担の工夫です。

〈ルーブリック表例〉

〈ポイント〉
観点別のフィードバックを行い、「何が良かったか」「どの部分を改善すべきか」を生徒が自覚することが大切です。
観察記録表※を活用して、話し合い中の発言や協力体制をメモ程度に記録し、より具体的なフィードバックをすることも可能です。
※観察記録表:生徒ごとに「素敵だったポイント」「気になったこと」「実際の発言」などを記録する表
発表でのルーブリックの活用場面
生徒が調査結果を発表する際、その発表内容と説明の仕方を評価するルーブリックを活用します。評価するのはスライド資料や発表内容の構成、説明のわかりやすさ、質問対応です。

〈ルーブリック表例〉

〈ポイント〉
発表練習を事前に行い、ルーブリックの観点を確認しながら改善ポイントを見つけると効果的です。
相互評価を取り入れ、他のグループからフィードバックをもらうことで、生徒同士で気づきを得られます。
このように具体的なルーブリック表を導入することで、評価が明確になり、グループワークや発表の質を高めることができます。次のセクションでは、ルーブリック評価を活用する際の注意点や改善ポイントを詳しく解説します。
ルーブリック活用のコツと注意点
ルーブリックを授業で効果的に活用するためには、評価基準を提示するだけでなく、フィードバックや指導方法に工夫を加えることも大切です。ここでは、ルーブリック活用時に意識すべきポイントを紹介します。
①生徒の主体性を引き出す
ルーブリックは単なる評価ツールではなく、生徒が「目標に向かって学ぶ道しるべ」として活用できるものです。評価基準を明確に示すことで、生徒自身が「何を目指すべきか」「どのように改善すればよいか」を理解し、主体的に学びを進めることができます。

さらに、ルーブリックを生徒と共に作成するプロセスを取り入れると、学習への主体性がより高まります。例えば、グループ活動の際に「発表の構成で大切なことは何か」を話し合い、評価項目を生徒自身に考えてもらうことで、評価基準への理解が深まり、自分たちで目標を設定する力が育まれます。
②具体的なフィードバックを行う
ルーブリックを使うことで、活動の後のフィードバックが具体的かつ明確になります。フィードバックを通して、生徒の中で気づきが生まれることこそ、評価の一番重要なポイントです。生徒が「良かった点」と「改善すべき点」に関して、気づきを得られるように活用しましょう。

コメントを書く際には、例えば、「内容が論理的でわかりやすかったけれど、話し方が少し速かったので次回は落ち着いて話してみよう」といった具体的なコメントを加えると、生徒は自分が取り組むべき課題を理解しやすくなります。単に「もっと頑張りましょう」という抽象的な言葉よりも、具体的なフィードバックは次の行動への意欲を高めます。
③ルーブリック作成や測定を目的化しない
ルーブリックはあくまで「学びを支えるためのツール」です。作成や測定に力を入れるあまり、それ自体が目的化してしまうと、本来の授業の目的である「生徒の成長を支援すること」が疎かになってしまいます。評価は、生徒に気づきを与え、次の行動を促すものです。特に探究学習では、「どうすればもっと良くなるか」を学習者が考える場を設けることが効果的です。生徒が自己評価や振り返りを行う中で、自ら気づきを得られるような場面を作ると、ルーブリックを「自分の成長を確認する道具」として使えるようになります。
そういった視点から考えると、ルーブリックに加えて、リフレクションが重要になってきます。以下のように、ルーブリックと一緒にリフレクションを記述したり、ルーブリックで自己評価をしたあとに対話する場面を設けたりしましょう。

ルーブリックは評価の透明性を高めるだけでなく、生徒の主体性を引き出し、次の学びにつなげるための大切なツールです。評価基準の提示とフィードバックを工夫しながら、授業の質をさらに向上させていきましょう。
ルーブリック評価の信頼性と公平性を高める工夫
教育現場での評価において信頼性と公平性を高めることは、生徒の成長を適切に支えるために欠かせません。ここでは、評価をより正確かつ公平にするための具体的な工夫を紹介します。
①教師間での「モデレーション活動」
モデレーション活動とは、複数の教師が同じ作品や課題を評価し、評価基準の解釈をすり合わせる取り組みです。この活動により、以下の効果が期待できます。
評価の一貫性の向上:教師ごとの評価基準の違いを最小限にし、統一した評価を実現します。
教員の相互研鑽:評価基準に対する意見交換を通じて、教員同士が評価スキルを高め合う機会となります。
〈実践例〉
定期的にモデレーション会議を開催し、授業内の成果物や発表内容を評価し合い、解釈のズレを確認します。
事例を基にした練習としての評価を行い、観点別の評価レベルを共有します。
②評価基準の共有と定期的な見直し
評価基準を透明にし、生徒や保護者にもわかりやすく示すことが公平な評価につながります。また、定期的に見直すことで、授業や課題に応じた柔軟な対応が可能となります。
〈具体的な取り組み〉
評価基準表の配布:授業の開始時にルーブリックを生徒と共有し、評価の観点や基準を説明する時間を設けます。
フィードバックの確認時間:フィードバックを生徒と一緒に確認し、基準の理解を深める機会を作ります。
年数回の見直し:学期ごとに評価基準の適用例を見直し、改善点を共有することで、基準の妥当性を維持します。
ぜひ、紹介した手順や工夫を取り入れてみてください。ルーブリックを活用した評価を通じて、生徒が主体的に学び、成長する授業を共に創り上げていきましょう。
ICTツールを活用した効率化
ルーブリックの作成や共有を効率化するためには、ICTツールの活用が効果的です。ClassPad.netなどのICTツールを使うことで、評価作業を効率化し、生徒の学習活動をより可視化できます。
ルーブリック作成・共有の効率化
ICTツールを使えば、評価表を簡単に作成・編集し、すぐに生徒と共有することができます。紙媒体での配布や記入よりも短時間で準備できるため、授業準備の負担を軽減します。特にClassPad.netのようなツールでは、テンプレート機能を活用することで、ルーブリックを効率的に作成できます。

オールインワンの学習アプリClassPad.netでは様々な機能を利用して、ルーブリックを利用した授業展開が可能です。
〈具体的な活用例〉
評価表の共有:評価基準をClassPad.net上に保存し、授業内の生徒へそのまま配布。
手書き機能:生徒が直接評価表に記入することができ、教師への提出もClassPad.net上で完結。先生がそのままフィードバックを記入して返却することも可能。紙面のやり取りを省略して授業を効率化。
生徒の自己評価・相互評価の促進
ICTツールを活用することで、生徒の自己評価や相互評価をスムーズに行うことができます。タブレットやPCを使用して評価を記入し、クラス全体で意見を共有することで、生徒同士の対話や学び合いを促進できます。

〈効果的な活用ポイント〉
フィードバックの可視化:ルーブリックとともにデジタルノート上で思考の過程も残すことができ、自己評価がしやすくなる。
ふせん送受信機能:生徒同士のふせんの送受信により、生徒同士のフィードバックも活性化。
ICTツールの活用により、ルーブリックの作成や共有が効率化し、評価にかかる時間を短縮できます。また、生徒自身が評価を振り返る機会を増やすことで、主体的な学びを深めることができます。授業の中で少しずつツールを取り入れ、ICTを活用した授業改善を進めていきましょう。
まとめ
本コラムでは、ルーブリックの基本的な定義から教育現場での意義、作成手順、活用事例、評価の信頼性向上の工夫、そしてICTツールの活用法まで解説しました。ルーブリックは評価基準の明確化を通じて、生徒の主体性を引き出し、授業の質を向上させる重要なツールです。特に探究学習やアクティブ・ラーニングにおいては、学びのプロセスを評価することで、生徒は自らの成長を実感でき、次のステップへのモチベーションを高められます。
また、モデレーション活動やICTツールの活用によって評価の公平性や効率性を高めることで、教師にとっても負担を軽減しつつ質の高いフィードバックを提供できます。
ぜひ、紹介した手順や工夫を取り入れてみてください。ルーブリックを活用した評価を通じて、生徒が主体的に学び、成長する授業を共に作り上げていきましょう。
CASIOでは、ICTを活用したスムーズな授業や「探究学習」の実践を支援するため、デジタルノート機能や課題共有に活用できる授業支援機能が入った『授業特化型アプリClassPad.net』のトライアル版をご用意しております。ぜひご活用ください。

■著者・監修者
芹澤 和彦
高校英語教員/教育クリエイター
講演、企業研修、教員研修、イベント運営を多数実施。英語教育ではEF Excellent Award in Language Teaching 2019 Japan Finalist 第2位の表彰、アントレプレナーシップ教育ではNPO法人BizWorld Japan アドバイザー、ICT教育では2019~2022 Microsoft Innovative Educator Expertの認定を受けるなど、ジャンルを越えて教育実践を展開している。探究やクリエイティブ・ラーニング型授業の実践家である一方で、教員をしながら個人事業として起業。学校と社会の繋がりをつくる多様な活動をしている。
著書『中学校・高等学校 4技能5領域の英語言語活動アイデア』(明治図書)。
全国の中学校・高等学校で導入されているICT教育をサポートする、カシオの「ClassPad.net」
「ClassPad.net」とは、カシオが電子辞書や関数電卓で
長年培ってきたノウハウをいかし、
開発されたICT学習アプリです。

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【主な特長】

2.自由度の高いデジタルノート機能
辞書の検索結果や例文、Webページ・YouTube・Google マップのリンクなどを自由に貼り付けられるデジタルノート。調べてまとめることで思考力が身につきます。



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