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  ICT教育・GIGAスクール構想関連コラム

主体的・対話的で深い学びと英語教育【前編】
英語教育の転換に教師はどのように対応したらよいのか

『英語教育』を語る特別対談 前編

芹澤 和彦
高校英語教員/教育クリエイター

今井 裕之
関西大学外国語学部 大学院外国語教育学研究科 教授

芹澤 和彦先生

今回は、「主体的・対話的で深い学びと英語教育」というテーマで、関西大学大学院 外国語教育学研究科の教授、今井裕之先生にお話を伺います。
今井先生は英語教育学を専門とされ、「英語の先生がどのようにプロとして成長していくのか」という課題に長年取り組んでこられました。大学での教師教育に尽力する中で、小学校・中学校・高等学校の現職の教師とも多く関わり、教育現場の実情を深く理解していらっしゃいます。

「探究」授業の創設や「主体的・対話的で深い学び」の重要性が叫ばれる今日、英語教師にはどのような変化と対応が求められるのでしょうか。本コラムでは、日々生徒と向き合い奮闘されている先生方の今後の活動のヒントとなる議論をお届けします。

今井 裕之先生

今井 裕之
関西大学外国語学部 大学院外国語教育学研究科 教授

小中高の英語授業研究を継続して行なっている。特に、社会文化理論の観点から授業のコミュニケーションを分析し、対話による相互行為を通した言語学習を研究している。また、中高生のための英語スピーキングテスト開発、中学校英語教科書編集に携わるほか、小中高の英語授業研究会、研修会に参加し実践研究、授業開発を行なっている。
全国英語教育学会理事、関西英語教育学会副会長、小学校英語教育学会理事

日本の教育研究の歩みと、前提となる考え方の変遷。
学習は個人ではなく他者との会話を通して生まれるという発想へ。

芹澤 和彦先生

現在の英語教育を語る前に、今井先生が教師教育を始められた30年前からの変遷について振り返ってみたいと思います。当時、第2言語習得理論はまだ発展途上にありました。また、英語教育学の分野においても、学習者がどのように自立的に学んでいけるかという視点の理論は、まだ十分に確立されていなかったように思われます。

今井 裕之さん

英語教育研究がコミュニケーション能力育成に転換し始めたのは1980年代に入ってからだと認識しています。それ以前は「言語の構造(文法)をどう理解し使えるようになっていくか」でした。つまり「言語の学習研究」です。
学習者がいかに言語の構造を効率よく理解しそれを使えるようになる練習ができるか、という機械のような捉え方が主流でした。1980年からは「コミュニケーション能力」が目標となり、そして、第2言語習得の研究において社会的視点を取り入れることの大切さ、いわるゆ「ソーシャルターン」が唱えられるようになったのが1990年代です。

芹澤 和彦先生

文部科学省が提唱する「主体的・対話的で深い学び」に「対話的」が含まれていることを考えると、これまでの教育研究の中でなされてきた社会文化理論的な議論に基づいた価値観が学習指導要領の中にも組み込まれていった、と捉えられますね。

今井 裕之さん

そういった背景はあるかと思います。社会的な学習の考え方として、ヴィゴツキーの心理学などが盛んに議論されるようになったことで、「学習は個人で完結するものではなく、他者との対話を通じて生まれる」という発想へと変化していきました。

歴史的には、学習指導要領へのより直接的な影響は、OECD(経済協力開発機構)での議論が大きいとは思いますが、いずれにせよ、このことは教育現場にも大きな転換をもたらしたと思います。それまでの評価軸である「関心・意欲・態度」は、個人がそれをしっかり持ち、学習に臨むものとして評価されていました。しかし、主体的に学習に取り組む態度の中に「対話性」が含まれるようになり、「自分だけで解決する」のではなく、「他者と協働して学ぶ」ことが前提とされるようになりました。

今井 裕之さん

※ヴィゴツキー:学習と発達の関係性に焦点を当てた研究で「社会文化的理論」と呼ばれる学習理論の基盤を築いたロシアの教育心理学者。

学習指導要領を機に変化が求められている英語教育。
今までのやり方から脱却する難しさを抱えながらも、ここ10年での教師の変容は?

芹澤 和彦先生

現場の教師としては、どうしても大学入試を意識することが多く、英語教育も依然としてインプットが中心となっているのが現状のような印象もあります。
教育研究の発展による学習に対する考え方の変容が教育現場にどのような変化をもたらしたか、今井先生がこの10年ほど「教師の教育」に携わっていらした中で、教師や授業の変容についてお気づきになられたことがあれば教えてください。

今井 裕之さん

入試のための英語教育が続いていることは確かです。ただ一方で、学校教育現場でパフォーマンス評価が普及し、4技能全てが評価対象となったことは大きな変化だと感じます。私自身の活動を通じた実感ですが、授業で教師が一方的に話したり、ひたすら問題集を解かせたりするような形式の授業は、本当に減ってきました。この10年で最も大きな変化は、授業の中心が言語活動へと移行したことだと思います。

一方で、探究的な学びやクリエイティブ・ラーニングといった、より深い学びにはまだ到達していないと感じます。現状では、学んだ文法や語彙を実際に使ってみる活動に留まっており、その先の発展が課題です。「英語が使える・英語で対話できること」自体をゴールとすると同時に、PBL(Problem Based Learning/Project Based Learning)のように、対話を学びの手段(ツール)として機能させる方法へと変化させていくことが、英語教育の次のステップだと考えています。

芹澤 和彦先生

義務教育でも英語が始まりました。小学校では対話や音声を中心に英語に慣れ親しむことを大事にしている一方で中学校の先生は文法意識が強く、小中間で英語教育にギャップが生じている印象があります。このような流れの中で、高校教育が「英語を話す意欲を育んでいるか」を問うのは難しい状況かもしれません。

芹澤 和彦先生

実際、私が高校の現場でPBL(Problem Based Learning/Project Based Learning)を取り入れようとすることのハードルの高さを感じています。英語だけでなく日本語も駆使しながら、どのように効果的な英語のPBLを実践するか、試行錯誤を繰り返しています。最近ではランゲージングという考え方もありますので、取り入れながら模索している状況です。

※ランゲージング:自分が理解している内容や聞いたり読んだりして得た情報を言葉で表すことを通して、知識を形成・再構築していくこと。

今井 裕之さん

お気持ちは非常に分かります。今回の学習指導要領は学力をより捉えやすくしており、とても良くなったと私は思っています。ただ、義務教育から高校までの流れを見たときに、文法の基本的な内容をはじめ、大抵のことが中学校の中に入ってしまっている印象があります。語彙数もこれまでの1,200語から、小学校と合わせて約2,500語(中学校では1600-1800語)に増えたことで、先生方がその指導に注力せざるを得なくなっています。その結果、「クリエイティブに言葉を使う」や「最初は文法は多少間違っていても構わない」という発想への転換が難しい状況だと感じます。

現在の中学校の教科書には、いきなりモデル英文が提示されるのではなく、「まず絵を見ながら会話を聞いてみよう」といった場面状況からのアプローチが取り入れられているものもあります。英語を「場面状況から(なんとか)意味を理解すること」から入り、その後に文法形式を学ぶという方向へ転換が図られています。しかし、それでも中学校でこれらをすべて消化するのは難しく、クリエイティブに即興的に英語を使うまでには十分至っていません。その分、高校がその役割を引き継ぐことになりますが、やはり導入期の指導には大きな苦労が伴うのだと思います。

芹澤 和彦先生

高校は学力で分かれるという前提がある中で、中学校の時に英語のテストで良い点数が取れなかった生徒たちが集まっているクラスも存在します。まずしっかり授業に集中することや先生との関係性づくりの点でうまくいかない状況もあるなか、英語教育として「主体的・対話的で深い学び」を実践することの難しさがあるのかもしれません。
ここからは、このような現状のなか、現場の教師はどのようなことを意識し対応したらよいか議論したいと思います。

① 対話の基本である「YouとI」を意識することが、言語活動の第一歩。

今井 裕之さん

「主体的・対話的で深い学び」を実現するためには、まずお互いが You と I の関係性を築くことが基本です。この関係性がなければ、対話そのものが成立しません。また、他者との関係の中で自分の役割を認識できなければ、生徒は主体的に学ぶ姿勢を持つことが難しいと感じます。

そう考えた時に、「みんなよく座ってしっかり聞いておきなさいよ」「ノートを取りなさいよ」と言うレクチャータイプの授業スタイルの先生と1クラス40人の生徒の関係性というのは、YouとIの二人称ではなく、実は三人称的関係になってしまっているのです。このスタイルでは、生徒が教師にとって He や She あるいはTheyの存在となり、生徒は「私が授業中に外を向いていても支障はない」と感じてしまいます。そのような学び方を続けてきた生徒にとっては、教師やクラスメートに「応答する責任」も生まれず、教室の中の自分は “nobody”になり、主体的・対話的に学んでいく関係性作りが難しい。

これを克服するためには、授業で言語活動を積極的に取り入れることが重要だと思います。言語活動を中心とした授業では、生徒と教師が授業時間の大半を You と I の関係性の中で過ごすことができます。これは、対話を通じた学びの基盤を作る上で非常に効果的です。

新しい学習指導要領によって、レクチャー型授業からの脱却が進みつつあることは素晴らしいことだと思います。ただ、それを実現するためには、依然として多くの課題や試行錯誤が必要だとも感じます。

芹澤 和彦先生

まさに、その難しさに多くの先生方が直面していると思います。もしかしたら、「できることから少しずつ変えてみる」という考え方が必要かもしれません。
例えば、授業構成の中でレクチャー部分が多かったとしても、授業の最後に振り返りの時間を設けることから始めてみるのはどうでしょう。「授業の中であなたは何を学びましたか?」という問いを生徒に投げかけるだけでも、主体的な学びの一歩になります。
さらに、「気づいたことを一つずつお互いに言ってみよう」というような、生徒同士の対話を取り入れることで、You と I の関係性が少しずつ生まれるはずです。こうした小さな取り組みが、授業をより対話的で主体的なものへと変えるきっかけになると思います。

今井 裕之さん

まさにそうですね。これこそ、今日お話ししたかったことの一つです。主体性の評価方法として、授業や単元の終わりに生徒が振り返りを書き、それを教師が評価するという形式があります。芹澤先生がおっしゃるように、振り返り自体を対話の中で引き出していくことが重要だと感じます。

教師と生徒が同じ視点で振り返りを行えるようになるには、両者の間の距離を埋める工夫が必要です。もちろん会話を通じて距離を縮めることも大切ですが、例えばテストの結果やポートフォリオなどの評価題材を使いながら、生徒に「自分の得意なこと」や「苦手でうまくいかなかったこと」を自覚させる取り組みも効果的です。この際、教師が聞き役に回り、生徒自身の気づきを引き出すことが、評価を「主体的・対話的で深い学び」として実践する鍵になると思います。こうしたプロセス自体が、生徒の主体性を育てる手段になるのではないでしょうか。

また、振り返りには言語化が重要ですが、言語だけに頼るのではなく、グラフなどビジュアル化されたツールを活用するのも良いですね。例えば、過去の学習意欲の変化を示す「学習意欲曲線」を生徒自身が作成し、それを友達に見せながら「中学1年生の時はこんなことがあって」といった話を共有する。こうした活動を通じて、自分の主体性の浮き沈みを自覚し、それを言語化するプロセスが新たな気づきや成長に繋がると思います。

今井 裕之さん

②あえて英語のレベルを下げてみることが、
 「生徒が言語活動に慣れていない」という問題を乗り越える活路に。

芹澤 和彦先生

先ほどレクチャー型授業についての話がありましたが、現場の実状として、受け身の授業スタイルが染み付いてしまい、言語活動に慣れていない生徒が一定数いるという課題があります。特に、中学校で英語が得意でなかった生徒にその傾向が顕著だと思います。

言語活動を中心とした授業を展開しようとしても、生徒がなかなかついてこられないという悩みを抱える先生も多いのではないでしょうか。中には、レクチャーを面白く工夫し、生徒の興味や関心を高めるアプローチを試みる先生もいます。しかし、それでも興味を持てない生徒は少なからずいます。また、そのようなレクチャー型授業の中で実際に言語活動が行われているかというと、そうではない場合が多いのが現状です。

こうした言語活動に慣れていない生徒たちの課題に、どのようなアプローチが考えられるでしょうか。

今井 裕之さん

その学年、学期に学ぶべき英語を使いながら言語活動を行うのは、確かに非常に難しいことだと感じます。私が高校の英語授業を見学する中で、「英語のレベルをあえてぐっと抑える」というアプローチを実践している先生がいて、それが一つのヒントになると感じました。

行っている単元で即興的な言語活動が難しい場合、英語のレベルをあえてベーシックなものまで下げ、とにかく活動的に行う。例えば、音読活動を取り入れながら、生徒一人一人をしっかり観察し、その生徒の癖や得意な点を把握し、個別にアドバイスしていく。こうした取り組みを通じて、教師と生徒の一対一の関係性が徐々に構築されていく様子が見られました。

一見すると当たり前のことのように思えますが、このような「二人称的関係」での活動で築かれる関係性は、レクチャー型(三人称的)授業と比べて何倍も強いものになります。生徒が英語に向き合う姿勢や興味を引き出す上で、こうした工夫が非常に効果的であると感じます。

③「言葉の宛名性、授業のオーサーシップ」の意識が
 言語教育を生きたものに変えていく。

今井 裕之さん

私は言語教育において「宛名性(Addressivity)」、つまり「誰が誰に向けてこの言葉を発しているのか」が明確であることが重要だと考えています。それによって、言葉が生きたり死んだりするからです。

長年教科書作りに携わってきましたが、教科書が「面白くない」と言われる理由の一つは、その言葉に宛名性が乏しく、リアリティが欠けているからだと思います。誰が誰に向けて発しているのかが明確でないため、言葉が死んでしまうのです。

一方で、教室で生徒が行っている言語活動を全員で共有する場面では、その生徒が誰かに向けて話している様子がはっきりと見えます。これが、クラス全体で協働的にその内容に注目するきっかけや動機になるのです。こうしたプロセスで、教室の中で起こっていることを引き上げ、全員で「こうでもない、ああでもない」と話し合える場を作ることが授業では大切だと思います。

このような「宛名性」を持った生徒と教師の声によって作り出される授業って素晴らしいと思いませんか?それを表す「授業のオーサーシップ(著者性)」という言葉があります。伝統的なレクチャー型授業では、学習者が誰であっても同じ内容が伝えられるため、生徒が授業の内容や展開に影響を与えることはほぼなく、授業というシナリオを書くのは教師のみで、オーサーシップは教師にしかありません。しかし、本来、授業の内容や形は、その場に参加している生徒たちによって大きく変わるはずです。「主体的・対話的で深い学び」とは、生徒たちのオーサーシップが反映されている状態だと考えます。例えば、生徒たちが自ら発表を行ったり、「こういう方法で進めたい」と提案してきたりすることで、彼らの著者性が発揮されます。そうした関わり方によって、授業はその都度違う形になり、生徒一人一人が主体的に関与する理想的な場が生まれるのです。

また、生徒たちがオーサーシップを持つことで、授業そのものの質だけでなく、参加者の満足度やマインドフルネスが向上します。教師としては、授業の質を高めることだけに目を向けるのではなく、参加者の満足度に目を向けてみることも大切だと思います。

芹澤 和彦先生

私が担当する授業では、まさに今井先生がおっしゃるオーサーシップを意識し、授業の最初に「どんな授業を作りたいか」を生徒たちに考えてもらうようにしています。クラス内で対話を行い、それぞれの意見を発表してもらう時間も設けています。そして、「授業を作るのは僕だけの役割ではなく、僕がどれだけ頑張っても50%の力しか発揮できない。残りの50%は、みんな一人一人が作っていくしかない。一緒に授業を作ろうね」と伝えるようにしています。

探究コースでの英語の授業では、生徒が自ら授業運営チームを作り、自分たちで英語の授業の目標と目的を設定しました。その目標を基に、「どんなテストが理想か」「どのような授業カリキュラムにすべきか」を生徒たち自身でデザインする取り組みを行いました。運営チームの生徒たちは、どうすれば英語が身に付くようになるのか、また、英語が苦手な生徒を含めてクラス全員が英語を好きになるにはどうすればよいのか、と試行錯誤を重ねながら進めていました。

芹澤 和彦先生

生徒たちが主体的に考え、協働して授業を作り上げていく姿を見ることは、教師として大きな喜びであり、驚きでもありました。

生徒たちの活動の一例をご紹介します。

生徒たちの活動の一例

「副詞」を適切に使うと表現の幅が広がることを発見した生徒たち。みんなで練習するために、よく使う副詞をまとめ、テストに。

生徒たちの活動の一例

「時制」を活用したコミュニケーション活動を考案。「10年前の自分に手紙を書いてみよう」という活動。

生徒たちの活動の一例

パフォーマンステストとして、入国審査の場面での会話を企画し、パスポートを自作。

生徒たちの活動の一例
生徒たちの活動の一例

範囲表を作成し、クラスへ提示。パフォーマンステストでは、ネイティブ教師と相談した上で、自分たちでルーブリック評価を作成。

今井 裕之さん

非常に興味深い実践ですね。生徒たちが「他の友達に英語を好きになってもらうにはどうしたら良いか」を、自分たちの授業の目標に据えたことは、本当に感動的だと思います。これは、英語教育における主体的な学びの理想形を体現しているように感じます。

生徒自身も、「ただ頑張って」と言われるだけでは成果が出ないことをよく理解しているでしょう。だからこそ、「ではどうしたら良いか」について冷静にアプローチし、実行に移せている点は本当に素晴らしいことだと思います。

④ペンシル&ペーパー、チョーク&トークからの脱却。
 ICTの力が学びの環境そのものを変えていく。

今井 裕之さん

「環境が生徒を作る」という言葉があるように、一度染み付いてしまった受け身の姿勢を変えるのは簡単ではありません。こうした状況において、ICTツールの活用は生徒たちの学び方や授業への参加の仕方を変化させるため、環境を変える手段として非常に有効だと思います。

ICTツールを使えば、生徒一人一人が書いた内容を簡単にスクリーンに映し出し、クラス全体で共有することができます。また、対話が苦手な生徒でも、他の生徒の解答や意見を見て学ぶ機会が増えます。授業のプラットフォームが物理的な教室からデジタル空間へと移行することで、学びの形が大きく変わりつつあります。この変化は非常に劇的です。

現在、教科書や教材のデジタル化が注目されていますが、もっと重要なのは授業のプラットフォーム自体をデジタル化することだと考えています。(例えば、「オンラインホワイトボードを活用してリアルタイムで意見を共有する」「デジタルノート機能のあるソフトウェアを使用し生徒が作成、オンラインで提出した課題や意見を授業内で教師が添削」といったこと。)
今後、デジタルプラットフォームに対応した授業スタイルが主流になっていく中で、教師が実現したい学びの形を反映できるようなプラットフォームの設計が重要になると思います。

芹澤 和彦先生

ICTツールの影響力は非常に大きいですね。私も以前、兵庫県の高校1年生を対象にICTツールを活用した授業を行う機会がありました。初年度はGIGAスクール構想の対象外だった生徒たちを担当しましたが、翌年にはGIGAスクール構想でICTに慣れた生徒たちが高校1年生として入学してきました。

芹澤 和彦先生

もちろん、他の要因も考えられますが、2年目の生徒たちのグループでの対話の質が大きく向上していると感じました。ICTツールに慣れ親しんでいることで、生徒同士の意見交換や協働作業がよりスムーズに進み、授業全体の活気が高まった印象を受けました。

今井 裕之さん

これまで「ペンシル&ペーパー」「チョーク&トーク」といった言葉で表されてきたように、学びのツールが黒板とチョーク中心で、教師が一方的に説明するだけだった時代がありました。しかし、学びのプラットフォームが変わることで、授業における教師と生徒の役割が変わり、授業そのもののあり方も変化していきます。これは、授業が行われるコミュニティそのものが変わっていくということだと思います。

私は活動理論の観点から、ツールの改革こそが最も重要だと考えています。教師も授業の一参加者であり、その場に存在するツールやプラットフォームから大きな影響を受けるからです。授業を変える際、教師がすべてを背負い込んで「どうしたらよいのだろう、面白い話しようか」と悩むのではなく、新しいツールやプラットフォームを理解し、「これを使ってこんなことをしたら面白いかもしれない」「生徒にこんな活動をさせてみたらどうだろう」と楽しみながら授業改善を発想することが大切だと思います。

また、ICTツールを活用することで、対話が生まれる仕掛けを作ったり、対話が苦手な生徒でもコメントを通して意見を交わしやすくする工夫を取り入れることができます。対話の形式を多様化し、物怖じしがちな生徒も参加しやすい環境を整えることが、ICTツールを活用する大きな可能性だと感じています。

芹澤 和彦先生

ICTツールを活用することで、対話を「混ぜる」ことができるのも大きな利点だと感じています。例えば、振り返りの場面で、ある生徒が書いた内容を全体に紹介したり、参考になるモデルとして他の生徒に見せたりすることで、自然に対話が生まれます。さらに、それについて生徒同士で意見を交わしてもらうことで、対話の方向性が多様化し、授業全体がダイナミックになります。

また、グループ活動の中でも、教師が「これは良い」と思った成果物をICTツールを使ってその場でスクリーンに投影し、クラス全体に共有することができます。このような手法を取り入れることで、生徒の学びを深めるだけでなく、PBL(Problem Based Learning/Project Based Learning)の可能性も広がります。ICTツールが提供する即時性や共有の簡便さは、授業の質を向上させる重要な要素だと感じます。

芹澤 和彦先生

ここまで、今井先生と「主体的・対話的で深い学びと英語教育」における教師の心構えについていくつかの観点で有意義な議論ができました。【後編】では、現場の先生方が抱える疑問やお悩みを基に、より本質に迫っていくようなお話を伺っていきたいと思います。

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著者・監修者 芹澤 和彦

■著者・監修者
芹澤 和彦
高校英語教員/教育クリエイター

講演、企業研修、教員研修、イベント運営を多数実施。英語教育ではEF Excellent Award in Language Teaching 2019 Japan Finalist 第2位の表彰、アントレプレナーシップ教育ではNPO法人BizWorld Japan アドバイザー、ICT教育では2019~2022 Microsoft Innovative Educator Expertの認定を受けるなど、ジャンルを越えて教育実践を展開している。探究やクリエイティブ・ラーニング型授業の実践家である一方で、教員をしながら個人事業として起業。学校と社会の繋がりをつくる多様な活動をしている。
著書『中学校・高等学校 4技能5領域の英語言語活動アイデア』(明治図書)。

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