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  ICT教育・GIGAスクール構想関連コラム

「指導と評価の一体化」って本当にいいの?
〜その危険性と本質について考える〜

「指導と評価の一体化」って本当にいいの? 〜その危険性と本質について考える〜
著者・監修者 芹澤 和彦

【著者・監修者】
芹澤 和彦
高校英語教員/教育クリエイター

「指導と評価の一体化」という言葉は、教育現場で広く使われています。文部科学省によれば、これは、指導と評価を別々のものと捉えるのではなく、評価の結果を次の指導の改善に生かし、さらに新しい指導の成果を再度評価するという、指導に生かす評価を充実させることを指します。

しかし、これは本当に学びの質を高めるために最適なのでしょうか?
実際、多くの教育現場では、これまでの評価観を脱却できておらず、「評価」と聞くと、「成績」がついて回るでしょう。しかし、評価の本来の役割は、成績をつけることではなく、学習者が自身の学びを振り返り、成長の手がかりを得るための重要な要素です。

本記事では、この「指導と評価の一体化」という言葉が、教育現場において、どのような捉えられ方をされれば、学びを深めるものとなりうるのかを考えていきます。現在のままでは、教育の柔軟性や創造性を損なう危険性をはらんでいることを指摘しつつ、「指導と評価の一体化」の本質を探り、その利点と潜在的な問題点について考えていきます。

学校現場での一般的な認識「指導と評価の一体化」とは?

「指導と評価の一体化」という言葉は、学校現場では主に「教えた内容や授業の活動と評価の整合性を確保すること」として理解されています。多くの教員が、評価を指導の一部として組み込みながら、学習の成果を適切に測ることを目的としています。

学校現場での一般的な認識:

●授業の内容や活動がテストと一致していることが重要
●評価基準を明確にし、授業とテストを連動させることが求められる
●評価の結果をもとに次の授業計画を立てる

この考え方は、学習成果を測定し、学習の方向性を確かなものにする上で重要です。しかし、実際の教育現場では、必ずしも理想通りに機能しているとは限りません。
「指導と評価の一体化」が強調されることで、評価のあり方に偏りが生じてしまうことはないでしょうか?たとえば、評価が成績のためのものになり、学びの振り返りとして機能しなくなる可能性はないでしょうか?次の章では、その危険性について具体的に掘り下げていきます。

「指導と評価の一体化」の危険性

「指導と評価の一体化」は、理想的には学びの質を向上させる仕組みですが、現状の学校教育のシステム(総括的評価で終わるシステム)において強調してしまうと、実際には多くの危険性をはらんでいると筆者は考えています。

①本質的な学びが変化

本来、教育は学習者の創造性や主体性を育むものです。しかし、「指導と評価の一体化」が形式的に進められると、学習者は「評価のための学習」に終始しがちです。たとえば、筆者はこれまで受け持ってきた高校生に対して、授業初めに、「テストの目的って何だと思う?」と投げかけてきました。
その中でも、8割の高校生は「順位を決めること」と言います。学校教育のシステムが「指導と評価の一体化」の理想を実現できていない証拠だと考えています。

①学びの目的が変わる

②形成的評価の軽視

「評価」は本来、学習者の成長を促すためのものですが、形成的なもの(学びのプロセスに焦点をあてること)ではなく、総括的な評価(テストの結果に焦点をあてること)に偏りがちです。テストやレポートの点数ばかりが重視され、プロセスを重視する形成的評価(フィードバックや振り返り)が軽視されてしまうリスクがあります。筆者がもっとも危険だと思うのは、「振り返り」を設け、そこで「書けた量」を成績に含め、主体性の評価とすることです。

②形成的評価の軽視

本来大切なのは、書けなかった学習者がいるときに、その子がどんな考えをもっていたかを掘り下げることであるはずです。成績付けを意識しすぎることで、その大切な対話やフィードバックの機会が失われてしまいます。「指導と評価の一体化」と聞くと、このように、授業の活動と評価を一致させる必要がある、つまりこの例でいう、「振り返り」を必ず「成績づけすること」が正しいというイメージを押し付けてしまわないでしょうか。

③指導の柔軟性の喪失

「指導と評価の一体化」が強調されすぎると、評価に適合する形で指導が設計され、指導の柔軟性が失われる可能性があります。たとえば、評価基準やルーブリックが厳格に定められることで、学習者の個々の学びや興味を反映した柔軟な授業運営からは遠ざかります。指導が評価の枠に縛られることで、本来重視すべき探究的な学びや創造的な活動が後回しにされることもあるでしょう。

③指導の柔軟性が失われる

このように、「指導と評価の一体化」という言葉を本質的に理解できていない場合には、実践の仕方によって大きなリスクが伴います。本当に学びを深めるためには、評価を単なる成績付けの手段とするのではなく、柔軟性を持った学びの支援ツールとして活用する視点が求められます。ここからは、「指導と評価の一体化」の本質を探り、学校教育において我々教員がどう考え、何を実施していけばよいかについて考えていきます。

「指導と評価の一体化」の本質とは?

「指導と評価の一体化」の本質は、「評価を通じて学習者の成長を支援すること」にあります。しかし、これまで述べてきたように、現状では評価が「成績づけの手段」として機能し、学習者の主体的な学びを支援する役割を十分に果たせていない場面が多いと考えられます。

「指導と評価の一体化」を単に「指導内容や活用と評価の整合性を取ること」と捉えてしまうと、評価が指導を制約する要因になりかねません。本来の目的である、評価を学びのプロセスに統合し、学習者の成長を促すこと、という理想を実現するためには、どういう心構えが必要なのでしょうか。ここでは、重要な考え方を3点紹介します。

①評価を「成績づけ」ではなく「学び」のツールとして捉える

評価は、単なる成績の判定ではなく、学習者が自身の学びを振り返り、次の学びに生かすための手段である。

既存の学校の評価システムはこう解釈しにくいため、学習者にも適時この考えを伝えることが必要です。そのためには、定期テストの点数だけでなく、学習者自身が「何を学び、どう成長したか」を認識する機会を多分に設けることが重要です。

例えば、授業中に「今日の学びのポイントは何か?」を学習者同士で言語化する時間を設けたり、教員からのフィードバックを通して「ここを改善すればさらに良くなる」ということを学習者自身が気づいたりすることができると、評価そのものが学習者の成長のためのツールとして機能しているといえます。

①評価を「成績づけ」ではなく「学び」のツールとして捉える

②形成的評価を充実させる

評価は、学習の途中経過を確認し、軌道修正を促すもの

繰り返しになりますが、評価=成績づけ、という認識をいち早く卒業しましょう。評価の目的は、診断と成長です。ゆえに、学習者が適切に自己評価を行い、内省を通して気づきをえることが最も重要です。教員はあくまでもサポート役として、必要に応じてフィードバックを提供しましょう。

例えば、ルーブリック評価を活用する場合も、「自分がどの段階にいるのか」を学習者自身が明確にしていなければ効果は半減です。学習者が自分の成長を可視化し、質的に自分のあり方を言語化することが本来的に求められていることです。そのためにも、ルーブリック評価などは、ポートフォリオ評価の一部として、学習プロセスの記録として活用し、その一連のプロセスを振り返る機会(評価セッションなど)を設けることは非常に有効です。

②形成的評価を充実させる

③学習者主体の評価を取り入れる

学習者が評価に積極的に関与する

つまり、「指導と評価の一体化」を実現するための本当の主体は学習者にあるということを理解する必要があります。成績づけを目的としないピア・アセスメント(学習者同士の評価)やリフレクション(振り返り)を取り入れることで、評価がより学びに結びつくものになります。

また、主体性を本当の意味で育むためには、「評価」のデザインプロセスに学習者が関与していることも大きな意義があります。ルーブリック評価も、生徒が部分的にでも自分自身で創ることで、それが自ら目標を設定するプロセスとなります。

③学習者主体の評価を取り入れる

このように、「指導と評価の一体化」を本質的に捉え直すことで、評価を学習者の成長を支援するツールとして活用することができます。単に「指導と評価の整合性を取る」だけでなく、評価を柔軟に設計し、学びのプロセスに統合することで、より深い学習が実現できるのです。

まとめ

本記事では、「指導と評価の一体化」という言葉が、教育現場において、どのような捉えられ方をされれば、学びを深めるものとなりうるのかを考えてきました。

主体性を育んだり、学びを深めたりするために提唱されている言葉のはずですが、学校現場ではまだまだ「評価=成績づけ」となりがちです。その結果、学習者は評価や、その手段であるテストを「点数を取るためのもの」と捉えてしまい、本来の目的である「成長の可視化」や「学びの振り返り」が機能しにくくなっています。評価が指導を縛るのではなく、柔軟な学びを支えるものになるためには、形成的評価の充実学習者主体の評価が欠かせません。

つまり、これまで考えてきたように、学校現場に根付く評価のあり方を「成績をつけるためのもの」から「学びを深めるツール」へとアップデートすることが非常に重要です。例えば、ルーブリックの活用ひとつにしても、単に成績をつけるためのものとして活用するのではなく、学習者自身が「どこを伸ばしたいか」を考えられる仕組みを整える。あるいは、振り返りを「書かせ、その量を数値化する」のではなく、学習者同士や教員との「対話の場」として機能させる。

まとめ

このように評価のあり方を変えることが、学びのあり方を変えることにつながります。「指導と評価の一体化」を、形式的な枠組みではなく、本当に学びを支えるものへと進化させていきましょう。

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著者・監修者 芹澤 和彦

■著者・監修者
芹澤 和彦
高校英語教員/教育クリエイター

講演、企業研修、教員研修、イベント運営を多数実施。英語教育ではEF Excellent Award in Language Teaching 2019 Japan Finalist 第2位の表彰、アントレプレナーシップ教育ではNPO法人BizWorld Japan アドバイザー、ICT教育では2019~2022 Microsoft Innovative Educator Expertの認定を受けるなど、ジャンルを越えて教育実践を展開している。探究やクリエイティブ・ラーニング型授業の実践家である一方で、教員をしながら個人事業として起業。学校と社会の繋がりをつくる多様な活動をしている。
著書『中学校・高等学校 4技能5領域の英語言語活動アイデア』(明治図書)。

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